アパレル商社復活の道-3 アパレル市場は4つに分かれる!商社復活「最後の戦略」とは!?

2020/07/28 05:55
河合 拓

私の30年にもおよんだ、商社復活のための戦略づくりの旅。この成果を、アパレル業界の様々な課題を商社視点でみながら、全3回に渡って解説していく。第3回は、これからアパレル市場は4つに分かれていくことが、私の分析の結果明らかになった。どんな市場構造になっていくのかを詳しく見ていくとともに、その市場環境下において、商社が復活するためにどのような戦略を繰り出すべきかを提言する。これは、商社復活、最後の戦略と言えるものである。

NanoStockk / istock
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これからのアパレル市場は4つに分かれる

 以前この連載で、売上1000億円のアパレル企業のある経営者が「うちは、仕入が600億円だから仕入原価を1%減らせば6億円利益がでる」という発言を取り上げ、業界で多くの人が「企画原価率」という指標と構造をあまり理解していないことを述べた。

 「企画原価率」とは、アパレル経営で重要な4KPI(重要業績評価指標)の1つであり、残る3つは「プロパー消化率」「オフ率」「残品率」であることは再三述べたとおりだ。

 すでに米国で始まったアパレル企業の産業再編の波は、いずれ日本にも上陸する。私は、「今後アパレル業界は金融主導で業界再編がはじまり、レナウンの経営破綻はその序章である」と述べたが、その余波は巨大な運転資本の山谷の中でハイリスクなビジネスを展開している商社に及ぶことになる。本来商社は売上が大きなアパレルの請負仕事をするのでなく、このようなアパレル不況だからこそ、正しい経営のあり方をアパレルとともに考え、ともに4KPIを指標としたビジネスを展開すべきだ。例えば、商社は時に「下げるのはうちの原価でなく、あなたたちのオフ率であり、目指すべきはプロパー消化率の向上です」という仕組みを説明、合意を得て、ともに全体最適を進めながらアパレル企業とともに目指すべきゴールを達成すべきなのである。

 単なる「生産請負」の先に未来はない。今まで幾度もトライしても変わらなかったとあきらめるのでなく、バリューチェーン全体の最適化をプロフィットシェア、リスクシェアをしながら目指すべきなのだ。

 例えば、ある商社は、「コンサルティング機能」を持ち、売上が乏しいアパレルに何人もの人員を送り込み、物流や組織などを改革し業績を改善させ、結果的に随伴トレード(付随する取引)拡大に成功した事例もある。加えて、昨今のデジタル技術は、従来不可能と思われていた10日程度で生産が可能なパーソナルオーダーによる受注生産や、在庫発注点管理による自動補充なども可能なのだ。こうした取り組みは、決して、アパレル単独、あるいは、商社単独でできるものではない。企業間をまたぐ垂直統合されたバリューチェーンからのみ生まれる技術である。

 一昔前は、企業がまず戦略をつくり、その戦略にあわせたプロセス設計を行い、最後にシステムをいれて、そのプロセスを自動化するという流れが一般的だった。しかし、今は、戦略立案の最上流工程にデジタル技術を見据えた検討が必須となっている。従来のように、企業の業務遂行能力、競争相手との差別化、顧客のニーズ、ウォンツといった3変数(戦略の3C)だけでは、競争に勝てないのである。このように、デジタル技術と4KPIをしっかりと理解し、事業構造との整合性をとりながら「逆に企画原価率を上げれば、損益計算書の原価率は下がる」など、単純な原価低減とは比較にならないほどダイナミックな意思決定が可能になる。ちなみにユニクロ、ワークマンなどのプロパー消化率は70~80%といわれ、企画原価率は40%を超えているようだ。これは、ベーシック衣料ならではの「ライトオフまでの期間長期化」により、キャッシュフローを悪化させても損益を最大化させるという戦略であることは解説した通りだ。

 一方、日本のアパレル産業は、産業を俯瞰してみたとき10億〜50億円程度の2万社もの中小零細企業がひしめきあう細分化された産業である。数億円の投資が必要なデジタル改革などできる企業はほとんどない。つまり、これからは投資余力がある企業とそうでない企業の差がますます大きくなることになる。日本で生き残るのは大企業、あるいは投資余力がある企業だけで、残念ながら外資アパレルが日本に参入、あるいは、企業買収をしかけ市場を形成するだろう。その結果、日本のアパレル市場は、

  1. グローバルに事業を展開するSPAアパレル
  2. 富裕層をターゲットにした高級品を取り扱うアパレル
  3. D2Cと呼ばれる小規模だが独特の感度を持つアパレル
  4. 二次流通市場(市場にでまわっている余剰在庫を買取・再販するアパレル)

4つになると思われる。

 

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