コロナ禍の新店オープン オーケーの周到な感染防止対策

大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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 新型コロナウイルス感染症が拡大するなか、食品スーパー各社では買いだめ需要への対応などに追われている。この状況を受けて4月に予定していた新店開業を延期する企業が相次いだ。

 そんななか4月21日、かねての計画どおり新店をオープンしたのがオーケー(神奈川県/二宮涼太郎社長)だ。オーケーといえば開店日は行列必至の人気店だが、感染拡大を防ぐさまざまな施策により、混乱した状況に至らず店を開業することに成功している――。

オーケーが4月21日、埼玉県さいたま市にオープンした「オーケー武蔵浦和店」
オーケーが4月21日、埼玉県さいたま市にオープンした「オーケー武蔵浦和店」

予定より30分早く
開店準備を整える

 食品スーパーの開店時は、多数の人が来店する。感染症のリスクが高まる「密閉」「密集」「密接」の“3密”の状態になることを避けるため、オーケーは開店前から手を打った。

 まず、同社は通常、店の認知度を高めるべくオープンから3週間、週に1回ずつ、情報紙と呼ぶチラシを新聞に折り込んでいるがこれを取りやめた。

 次に、新店オープン日は、営業開始前から来店客が店頭に並び行列ができ、人との濃厚接触につながってしまう。そこでオーケーは当日、従業員と事前に連携し、開店時間の午前9時より30分早く店を開けられるように準備。オープン時間が早まる可能性を考慮し、開店セレモニーも行わないことにしたほか、行列ができた場合も前後の間隔をあけて並んでもらえるようにカラーコーンで立ち位置の目印をつくった。

 さらには、来店客が集中した場合には入場制限が機動的に実施できるように、混雑具合に応じたシミュレーションも実施した。

 そして迎えた当日――。実際に来店客が午前8時頃から列をなし始めたため開店時間を早めて8時30分に店をオープンした。

オープン日、通常は店頭で見られるバイヤーや取引先の担当者などの姿はない。主通路上であっても人との距離を2~3mは空けられるくらい空間に余裕が見られた
オープン日、通常は店頭で見られるバイヤーや取引先の担当者などの姿はない。主通路上であっても人との距離を2~3mは空けられるくらい空間に余裕が見られた

店頭に立つ従業員数は
必要最低限にする

 営業時にもさまざまな対策を行っている。たとえば、オーケーでは通常であれば開店日には、来店客の反応を見るべく、店舗の従業員以外に、バイヤーも店頭に立ち品出しや接客を行う。しかし、それも店内の密集度合いを高めてしまうため行わないようにした。

 また、従業員から来店客への「いらっしゃいませ」という声かけも控えている。代わりに挨拶は店内放送で行い、その事情について店頭のPOPで説明している。

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記事執筆者

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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