ロピア、まいばすけっと、オーケー 出店エリアの変化を見れば戦い方が見えてくる

兵藤 雄之
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店舗データ提供:(株)デジタルアドバンテージ/ロケスマ

少子高齢化、人口減少が進み、新規出店による規模拡大が年々難しくなるなか、コロナ禍においても旺盛な出店意欲により、着実に店舗展開を広げている食品スーパー(SM)もある。
首都圏を地盤とするロピア、まいばすけっと、オーケーは、その中でも特に勢いのあるSM企業だ。

※文中の店舗数は各年2月末の数値。文中の距離は概算
地図上、ロピア<ロピアのロゴ>、まいばすけっと<まいばすけっとのロゴ>、オーケー<オーケーのロゴ

ロピアは「高品質なものを安く」提供することに重きを置き、神奈川県を中心とした首都圏に店舗を展開。創業は精肉店で、肉類を中心とした生鮮品の品質には定評がある。2020年に関西、22年に中部1号店を出店。23年には九州(福岡)、東北(仙台)、そして台湾にも出店して海外進出も果たす。東京ローカルSMのアキダイを買収したほか、親会社のOICグループが22年に同業のスーパーバリューを子会社化した。

まいばすけっとは、東京都、神奈川県を中心に展開する「都市型小型食品スーパー」。約60坪を標準とする小型フォーマットでありながら、生鮮3品と総菜を揃え、必要なモノを買い求めやすい価格で提供する。2005年から店舗展開をスタート。16年に東京23区すべてに出店、21年には千葉県、埼玉県に出店エリアを拡大。22年1月に1000店体制達成後も出店攻勢は続き、23年9月には1100店舗を超えた。

オーケーは首都圏が地盤。「高品質・Everyday Low Price」を経営方針とし、周辺競合店に対抗した値下げと品質により「地域最安値」をめざし、年間2ケタ出店を目標にしている。2023年10月、銀座に出店する(マロニエゲート銀座2)。東京都中央区への出店はこれが初めて。21年12月に関西スーパーマーケットの買収を断念したものの、24年をめどに関西エリアで1号店を出店する計画だ。

この3社の出店状況をマッピングし、2019年、23年で比較したものが<図1~3>。この間、3社とも店舗数を大きく伸ばしているが、出店戦略の違いにより、店舗数拡大の道筋が異なる。

各社の店舗網拡大の概況

図1:ロピアの拡大状況 地図:国土地理院
図1:ロピアの拡大状況 地図:国土地理院

ロピアは首都圏集中から、関西、中部(岐阜県)、山梨県甲府市、茨城県つくば市にも拠点を拡大している。集計時期の都合上この地図には反映されていないが、2023年に入ってからも、福岡県(福岡市ほか)、宮城県(仙台市)へ出店。ここ最近は、家電量販のヨドバシカメラグループが運営する物件への出店が目立っている(京都、甲府、福岡・博多、仙台)。

図2:面で拡大するまいばすけっと 地図:国土地理院
図2:面で拡大するまいばすけっと 地図:国土地理院

まいばすけっとは神奈川、東京のドミナント強化により、23区内北部、東部の濃度がアップしていることがわかる。2022年1月、大田区の「大森北1丁目店」の出店により、1000店舗を達成したが、大田区は23区内でもっとも出店数が多い。20年から千葉県、埼玉県への出店を開始しているが、いずれも飛び地を作らず東京都に隣接するエリアであり、面での拡大を徹底している。

図3:オーケーの拡大状況 地図:国土地理院
図3:オーケーの拡大状況 地図:国土地理院

オーケーの場合は、店舗数の拡大がわかりにくい。2022年1月から23年3月までに10店舗を出店しているが、19年段階の展開エリアから外側への出店はなく、すべて内側への出店だ。23年10月に出店する銀座店はその象徴といえる。

特徴的な出店戦略の例

まいばすけっとのドミナント戦略

図4:1000店舗目となるまいばすけっとの店舗周辺 地図:国土地理院
図4:1000店舗目となるまいばすけっとの店舗周辺 地図:国土地理院
図5: 埼玉県南部におけるまいばすけっとの店舗網 地図:国土地理院
図5: 埼玉県南部におけるまいばすけっとの店舗網 地図:国土地理院

まいばすけっとは、エリアを面で抑えることを徹底している。その象徴的な店舗が1000店舗目となった大森北1丁目店の出店。同店の周囲にはすでに店舗網が確立されていたところへの出店で、さらにドミナントが強化された。

2020年からは東京都区内を越えて埼玉県への出店をスタート。店舗網は京浜東北線、東北新幹線沿線に集中している。

図6: 東京都江戸川区葛西駅付近 地図:国土地理院
図6: 東京都江戸川区葛西駅付近 地図:国土地理院

まいばすけっとの店舗運営の特徴のひとつに、1人の店長が複数店舗をマネジメントするスーパーインテンデント制がある。徒歩で簡単に2店舗を行ったり来たりできるのが基本。それがはっきりとわかるのが、東京メトロ東西線・葛西駅周辺だ。直線距離200m前後で2店舗のペアが3カ所にできあがっている。葛西駅下走る環七を渡ることも、東西線の高架下を抜けることもなく、それぞれのペアを行き来することができる。

ロピアの関西進出

図7: ロピアの関西進出 地図:国土地理院
図7: ロピアの関西進出 地図:国土地理院

ロピアの関西進出は2020年9月、寝屋川島忠ホームズ店(大阪府寝屋川市)が1号店になる。そのため19年3月時点では、ロピアの姿はない。

21年3月になると、3店舗を確認できる。いずれも島忠ホームズ内での出店(2号店・尼崎島忠ホームズ店、3号店・鶴見島忠ホームズ店)だ。1号店は平和堂のSCアル・プラザ香里園の向かいに、大阪市内1号店の鶴見島忠ホームズ店は、500m圏内に、イオン鶴見緑地店、万代鶴見店、関西スーパー今福店がある激戦区への出店だ。なお、高槻市内に高槻精肉プロセスセンターがあり、1号店はそこから約4㎞の距離にある。

23年2月末時点では、一気に13店舗に広がり(大阪府5店舗、兵庫県5店舗、奈良県2店舗、京都府1店舗)、この2年の間で10店舗増えたことになる。最寄り店舗同士の直線距離は10㎞前後が多いが、兵庫県三田市内の兵庫三田店(22年3月開業)と、三田対中店(22年9月開業)とは5㎞と至近距離にある。

今後も、加古川市(兵庫県6店舗目、23年10月予定)、藤井寺市(大阪府6店舗目、23年11月予定)への出店が計画されている。藤井寺駅前への出店は、22年11月開業のららぽーと堺店とは直線距離5㎞のところになる。

各チェーン競合の事例

至近エリアで対峙する、ロピア、オーケー

図8:横浜市・港北ニュータウン近辺での競合 地図:国土地理院
図8:横浜市・港北ニュータウン近辺での競合 地図:国土地理院

神奈川県を本拠にする2社。神奈川県内にオーケーが49店舗、ロピアが27店舗を展開しているが、2019年以降に、直線距離500m圏内で両者が対峙するようになったエリアがある。

横浜市営地下鉄のグリーラインとブルーラインが乗り入れるセンター北駅とセンター南駅との直線距離約1㎞のなかに、ロピアノースポート・モール店、オーケー港北中央店、ロピア港北東急SC店が立地する。このエリアでは、11年4月にセンター南駅前にロピア港北東急SC店が開業して以降は、オーケー港北中央店と路線をはさむかたちで対峙していたが、19年3月にロピアノースポート・モール店が開業、さらに22年10月にはロピア港北東急SC店が大型改装を終え、ロピアの2店舗がオーケーを挟み込む状況になっている。オーケーは両駅から500メートル圏、ロピアの店舗はそれぞれ最寄り駅から200m圏にある。

図9:相模原市・東淵野辺近辺での競合 地図:国土地理院
図9:相模原市・東淵野辺近辺での競合 地図:国土地理院

直線距離400m圏だが、相模原市内、国道16号線をはさんで対峙するのが、オーケー古淵店とロピアが相模原島忠ホームズ店だ。2019年12月、ロピアの出店により、この関係が生まれたが、ロピア側には、相模原島忠ホームズ店同様、JR横浜線古淵駅から徒歩5分エリアに、イオン相模原SC、イトーヨーカドー古淵店もあり、こちらも激戦区だ。

図10:横浜市・港南台近辺での競合 地図:国土地理院
図10:横浜市・港南台近辺での競合 地図:国土地理院

最近になって、ロピアVSオーケーの関係が生まれたのが、JR京浜東北・根岸線港南台駅近く。2022年11月、オーケーが港南台店を開業したことにより、京浜東北線をはさんで直線距離500m圏に両者が対峙することになった。京浜東北・根岸線からは同じくらいの距離にあり、ともに環状3号線にほぼ接している。

オーケーとまいばすけっとの共存?

約60坪を標準とする小型フォーマットのまいばすけっとは、必要最低限の生鮮3品と総菜を揃え、SMが出店できないような立地のもと、コンビニエンスストアとSMの中間のような役割を果たしている。徒歩圏にあるまいばすけっとで、毎日の間に合わせを購入し、週末や時間に余裕のあるときは、オーケーを利用して、しっかりと買い物をする。両者がそんな補完関係にあると思われるエリアが存在する。

図11:東京都江戸川区葛西近辺の状況  地図:国土地理院
図11:東京都江戸川区葛西近辺の状況  地図:国土地理院

東京都江戸川区葛西の近隣、荒川、旧江戸川、首都高速、都営新宿線に囲まれ、直線距離で3㎞程離れてオーケー2店舗が営業しているエリアがある。このエリア内では、2019年から2023年にかけて、東京メトロ東西線沿線を中心にまいばすけっとが急増。南北約2.5㎞、東西約2㎞の中に20店舗近くが並び立っている。

図12:東京都足立区近辺の状況 地図:国土地理院
図12:東京都足立区近辺の状況 地図:国土地理院

東京都足立区、環状7号線、東武伊勢崎線をはさんで、3キロ弱の距離に、オーケーが2店舗ある。このエリアには、2019年時、まいばすけっとは1店舗もなかったが、2023年には、このオーケー2店舗の間を埋めるかのように、まいばすけっとが10店舗以上を出店している。

図13:川崎市・登戸駅近辺の状況 地図:国土地理院
図13:川崎市・登戸駅近辺の状況 地図:国土地理院

また、興味深い例が小田急線登戸駅近くにもある。

この地域周辺はオーケー店舗が複数展開している、オーケーのドミナントエリアだが、多摩川を超えた東京都側に集中しており、登戸駅からは1駅先の生田駅まで出なければならなかった。そのため、2019年には、登戸駅近くに日常の間に合わせを提供する役割をもつまいばすけっとが6店舗出店していた。しかし、2021年6月、駅から徒歩3分にオーケー登戸店が出店すると、まいばすけっと2店舗がまるで役目を終えたかのように退店している。

ロピアVSオーケーの競合

首都圏の外側へ向かって攻める傾向の強いロピアに対し、首都圏の外縁を設定し内側へ攻め込むオーケー。2019年から23年にかけて、互いに出店を競うエリアもある。

図14:首都圏東北部エリアの競合状況 地図:国土地理院
図14:首都圏東北部エリアの競合状況 地図:国土地理院

たとえば、東京都に隣接する埼玉県、千葉県のエリアでは、ロピアは松戸、成田を結ぶ線から北側、東武伊勢崎線近くから東側への出店に力を入れ、柏市および成田方面で5店舗に拡大した。さらに、2022年12月には、東武伊勢崎線の東側にロピア越谷大里店をオープン、同店から徒歩数分のところにあるグループ会社のスーパーバリュー越谷店のリニューアルも行い、この2店舗で越谷周辺エリアを固めている。

23区寄りの内側を固めるオーケーは、東京メトロ東西線から相互乗り入れしている京葉高速線八千代緑が丘駅前にオーケー八千代緑が丘店を出店。線路を挟んで至近距離にイオン八千代緑が丘店がある。
千葉市中心部には両者が新たに出店。オーケーはロピアが退店した付近に千葉市内3店舗目を構え、対するロピアはオーケー店舗を外側から包み込むような立地に3店舗を出店している。

図15:首都圏東北部エリアの競合状況 地図:国土地理院
図15:首都圏東北部エリアの競合状況 地図:国土地理院

JR中央線・武蔵野線、西武新宿線が走る小平、所沢エリアは、お互いが攻めている。

ロピアは、2019年には、武蔵野線沿線1店舗(東村山)だったが、以降2023年までの間に、小手指、西東京市、小平市、府中市に出店、エリア内5店舗と攻め込んだ。このエリアは、そもそもオーケーがにらみをきかせていたところだが、同社もロピアに負けじと、所沢、西東京に出店している。

今回は出店の勢いがあるSM3社の動向を分析した。それぞれ熾烈な争いを繰り広げながらも、各社それぞれの出店の傾向が見てとれる。 全国各地の勢力図がどう変わるのか、今後もこの3社から目が離せない。

※2023年10月5日 記事修正しました。

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