世界標準のD2Cを作るための5つの機能とは 顧客起点でビジネスモデルを再考せよ

河合 拓
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世界標準のD2Cを日本の製造業が持つために必要な5つの機能

atomicstudio/istock
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 それでは、世界標準のD2Cを、ブランドさえもっていない日本の縫製工場などが持つためにはどうすれば良いか。以下の5つの機能を実装する必要がある。

  1. 強いブランド (適当に名前をつけても売れない)
  2. 消費者を魅了するライブコマース
  3. ビッグデータアナリティクスの技術
  4. 在庫を極小化するマーチャンダイジング技術
  5. 決済機能と個別配送可能な物流

  これらは、中国のモンスター企業 Shein の逆モデルと私は呼んでいる。当たり前だが、CPACPO(新規顧客の獲得単価)LTVRFM(最終購入日、購買頻度、購買金額の3つで分析する手法)ROAS)(広告回収率)など、英語を習うものなら、アルファベットに等しい言葉とその概念は知っていて当たり前であることも付け加えておこう。

 特に、私が驚いたのは、現役の戦略コンサルタントが、ストックビジネスにおいて、レスポンスレートと自社固定費から割り出される顧客データのクリティカルマスについて、このクリティカルマスを満たすまで投下される広告の意味さえ理解せず、私に「この企業は、広告ばかりつかって客を増やしており赤字を累積させている」など、ストックビジネスの投資回収手法とマネタイズ手法さえ理解していないことだった。

 私自身、通販企業で実務を6年以上やっており、また、再建も経験したため、こうしたコンセプトは当たり前のように知っている。確かに、広告投下がAcquisitionと繋がっておらず、代理店に広告を払いっぱなしで、一方で広告を止めるとブレークイーブンを割るという、初期設定(レスポンスレート、LTV、自社開発固定費などから割り出される顧客データベース設計)から間違っているケースも見てきた。それも、超一流メーカーだ。つまり、代理店の「カモ」になっているわけだ。私は、技術やSDGs対応などは、素人考えで進めるべきではないと思う。

 今後、間違いなく、「作り場」と「売場」はデジタルで繋がり短縮化されてゆく。ECをリアル店舗のように売場の一つと考えると火傷をすることになるのは、冒頭のメタバースも同様だ。

 

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プロフィール

河合 拓(経営コンサルタント)

ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、政府への産業政策提言などアジアと日本で幅広く活躍。Arthur D Little, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナーなど、世界企業のマネジメントを歴任。2020年に独立。 現在は、プライベート・エクイティファンド The Longreach groupのマネジメント・アドバイザ、IFIビジネススクールの講師を務める。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/index.html

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