世界標準のD2Cを作るための5つの機能とは 顧客起点でビジネスモデルを再考せよ

河合 拓
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アパレルのD2C その多くがしている誤解とは

 私は、役所からの依頼で地場産業のブランド化の仕事をしたことがある。必死にブランド化、世界化を考えた私は、ファンドが行った「鯖江のメガネの世界化」などを徹底研究したのだが、私に突きつけられた言葉はあまりに身勝手なものだった。

 曰く、「我々は、何もしなくても天から金が降ってくる。だから、先生(私)は、自分たちがつくった事業計画にサインしてくれるだけで良い。余計なことをするな」だった。

 私は、プロのコンサルタントとして、クライアントの事業価値向上に、それこそ命をかけて取り組んできたのだが、このようなイカサマのような仕事はしたことがない。それでも、内容が素晴らしければ、サインも辞さないと、中身をみせてもらったら、各工場が好き勝手に仕事をやって、それらを束ねるECをつくる。つまり、工場からECで直接消費者に売るD2Cだということだ。

 聞けば、大阪で同じようなことをやっていて、そのとき使ったコンサルは有名な御仁らしいが、未だに赤字のようだと悩んでいた。当たり前である。私は、「Acquisition(新規顧客の獲得)はどうしているのか」など、通販の「基本のき」を聞いたつもりだが、驚くことに、彼らは、CPA(顧客獲得コスト)やLTV(顧客生涯価値)という基本さえしらず、「また、コンサルが横文字を使いやがって」と私の言うことに耳を貸さない。

 消費者に認知させるための先行投資もせず、誰もしらないサイトが一つできただけで、さらに、そのポータルから入る工場は、ライダースウェアもあれば女性用ドレスもあり、紳士ドレスもある。こんなサイトを誰が訪れるのだろうか。

  これは、私が見た最悪のケースのD2Cだ。それでは、その他のアパレルは何をもってD2Cとしているのか。驚くことに、「企画段階で消費者を巻き込み、消費者のニーズを服に活かすこと」をD2Cと呼んでいるようだ。しかし、このD2Cも致命的な欠陥をもっている。なぜなら、このD2Cは、消費者は自分が着たい服がくっきりとした解像度をもって頭の中にあること。また、その服が市場にないこと、が前提だからだ

日本のアパレル企業が採用しているD2C
日本のアパレル企業が採用しているD2C

 アパレルの店頭現場にいる人であればおわかりと思うが、お店に来る女子達は、必ずしも自分たちの着たい服を明確に持っているわけではない。それ以上に「お買い物」という行為が楽しいのだ。さらに、販売員との接客を通して、「ありたい自分」に近づく服と出会い、購買が発生する。

 論理的に考えて、明確に自分の頭に買いたい商品がある人はネットで服を買うだろう。SPAという言葉も製造小売業と訳されるが、この言葉もメーカー系アパレルにとっては「自社店舗をもつこと」だし、小売系アパレルにしてみれば「時前で生産をすること」と解釈され、ゆくところによって定義がバラバラになっている。そして実務を知らないファンドなど金融機関は「SPAであれば競争優位を持っている」と、風が吹けば桶屋が儲かる論理を振りかざす人も多い。消費者企画の商品供給など、私は丸井やスクロールで15年前からやっていたし、おそらく、多くのアパレルが試し、何の効果もないことが実証されているだろう。

 ちなみに三越伊勢丹は、消費者の声をダイレクトに聞くことより、半歩、一歩先を提案することが大事だと考えている。

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