世界標準のD2Cを作るための5つの機能とは 顧客起点でビジネスモデルを再考せよ

河合 拓
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VR、AR活用で、
販管費率を40%まで落とす

 私は、日本企業が世界で伍した闘うためには、「売上高販管費率を40%」にしなければ利益はでないと論じた。それでも、ユニクロやSheinの脅威の30%には遙か及ばない(Sheinは筆者想定値)。

 だが、販管費の大部分を占めるのは、地代家賃であり、日本のアパレル企業は、約20~30%が赤字店舗だ。これを退店・閉店し、VR(仮想現実)で世界観を醸成し、店舗がない場所にでも、ブランドが持つ世界観を見せ、AR (拡張現実)で着用着せ替えを行い、通常のECで購買する、という活用方法がいちばん理にかなっている。

 ところがメタバース導入企業が、このような一連の流れをデザインしているようには見えず、VRの中で「勇者の剣」を買うかの如く、服を買うなどということが、本当に閉塞感漂うアパレルビジネスの起死回生の一発になるとお考えなのか疑問だ。

メゾンのメタバース参入は
話題性と先進性を見せるため

 有識者会議での議論でもそうだが、ことあるごとに「LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)が」「プラダが」、「グッチが」といわゆるラグジュアリーブランドの名前を出し、「日本のアパレルも彼らのようにすべきだ」と論じる人が多い。こうしたメゾンがSDGsの観点からブランドエクイティ向上に利用しているのは事実だが、業界専門誌でもSDGsについて語るときは、トップメゾンの話ばかりである。

 日本のアパレル産業の話をしに来たと思ったらこの有様で、しまむら、TSI、パルグループ、オンワードなどの話しは一切でない。というより、知らないのだろう。トップメゾンは、昔から「変わったこと」をする。以前、日経新聞社の取材で、「最近、トップメゾンが、アニメや漫画をモチーフとしたデザインを多く出しているが、なぜか」という相談をうけた。答えは簡単だ。彼らは、他のアパレルとは異なり先進性をださねばならないため、「変わったこと」を積極的に行うことで、一般アパレルとの違いや差を出している。ただ、それだけだ。

 同様のケースが「D2C(ディレクト・トゥ・コンシューマ)」である。私はD2Cについて語って欲しいという依頼を受け、事前に関連書籍を2-3冊読んだのだが、それらのほとんどは、先進事例として挙げるのは化粧品ばかりで、なぜか、急に「アパレルは、、、」と話がすり替わる。資生堂、コーセー、ロレアルなど、化粧品は製造業がブランドを持ち、流通があって小売が複数のブランドを販売している。だから、自社ブランド群だけを集めた小売を自前で持つことは意味があるわけだ。またこうした流通構造から、製造業であるメーカーには消費者のダイレクトの声が届きにくく、ブランドホルダーである製造業は消費者調査ばかりやっている。今、フォーカスグループインタビューや定量調査は、こうしたブランドホルダー製造業ばかりだ。

ビジネスの自由度がない構造
ビジネスの自由度がない構造

 しかし、アパレル製造業はいわれたことをやるだけで、自社企画を持たない、自社ブランドも持っていないOEM工場である。彼らがブランドホルダーであるアパレル企業を飛ばして、消費者調査をやっても何の意味も無い。製造業のD2Cを考える上では、化粧品のビジネスモデルは、アナロジーとしては全く活用できないわけだ。

 

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