中国企業傘下の仏メゾン「ランバン」米国で上場 いまや中国企業に追いつけない理由

河合 拓
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仏の高級ブランドLANVIN(ランバン)率いるLanvin Group(ランバン・グループ)が、米国ニューヨーク市場に上場する。多くの人は知らないだろうが、実は、この仏のハイ・メゾングループの親会社は中国、複星国際グループ(Fosun)が所有しているのだ。今回は、投資会社を使って、一足飛びにブランド構築をする中国企業からわれわれが学べること、そして日本企業の行く末についても占ってみたい。

いまや中国企業傘下となったランバン・グループはSPACを通じてNY取引所に上場した
いまや中国企業傘下となったランバン・グループはSPACを通じてNY取引所に上場した

中国企業は世界市場で急成長をしている

 私が、日本のアパレルは、もはや死に体で、ファンドか中国集団に買収攻撃にさらされると言ったのは2年前で、20年前に「中国人の給与は日本人の1/20だから、日本で作るより安価にできる」と商社の南下政策を書籍「ブランドで競争する技術」で論じたのも13年前だった。

 驚くことに、今でも「中国など」と高をくくっている日本人が多い。中国シーインに今頃騒いでいるのも「周回遅れ」だ。日本のなんちゃってD2Cなど、いくら繰り返しても無駄。本当のD2Cの破壊力とに気づくべきだ、と私が中国シーインの分析をはじめたのは2年前だ。

 その間も、世界のアナリストたちから「中国シーインの弱点は何か」と頻繁に質問されてきた。私は「世界的に拡大するSDGsが彼らのボトルネックだ」と指摘してきた

 しかし、今では、どこもかしこもシーインをSDGsの観点から責め立てている。中にはイチャモンに近い話を誇張するものまである。「安いから悪い。あんな商売をされたら産業が潰れてしまう」というトーンだ。シーインが米国で版権侵害で訴訟されたことを受け(実際はあやまった報道である可能性もあることは前号で証明した)、日本のテレビ番組が鬼の首を取ったかのように報道し、責め立てている。

 終いには「ファストファッションは終わった」と欧州委員会が結論づける始末だ。
 ファストファッションの何が悪いのか
?捨てるのが悪いのならサブスクにすればよいだけだ。色々なファッションを安く楽しみたいという乙女心を、どこかの人民服のようなものに強制的に代えさせる方針など誰も耳を貸さないだろう。実際にシーインは拡大に拡大を繰り返し、すでにユニクロの売上までも抜いているという報道もある。

ファーストリテイリングから何も学ばず死の谷へ

 思い出して欲しい。ファーストリテイリングがはじめて原宿に出店したときも、ファッション業界人を中心に多くの日本人が「あんなものはファッションではない」と高をくくり、安物服のレッテルを貼って無視していた。

 私はユニクロの強さの秘訣を詳しく『ブランドで競争する技術』に書いたのだが、誰もが斜め読みしかせず、気づけばほとんどの国内アパレルは「完全KO」を食らう始末。今では、補助金無しでは生きていけないほど産業は弱ってしまった。

 すべては、バブル時代の古き良き時代に成功体験をした経営者達、そして、ファッションはこうやるのだと、自分のやり方を変えずに若者を道連れにし、死の谷(Death Valley)に向かおうとしている頭の固い人達の責任だ。

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