集中レジからの脱却方法は3択?U.S.M.H、トライアル、イオンを比較

宮川耕平(日本食糧新聞社)
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「集中レジ」とはレジが集中的に配置されている店内スペースのことですが、そこに会計の処理業務も集中しています。商品のスキャン処理と決済処理をいっぺんにやるため、レジの通過には時間を要します。レジがセミセルフでもフルセルフでも、スキャン処理と決済処理が集中していることは変わりません。フルセルフレジが改めて注目される昨今ですが、それがレジの進化のゴールでしょうか。レジのセルフサービス化は、レジレスの実現まで進むべきではないでしょうか。

スマホによるセルフスキャンの可能性を広げたカスミのBLANDE研究学園店

3社の仕組みを6つの観点から比較

 レジレスに至る重要な一歩は、スキャン作業と決済作業を分離させることです。

 その仕組みとして、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都/藤田元宏社長、以下:U.S.M.H)の「スキャン&ゴー」、トライアルグループ(トライアルホールディングス、福岡県/亀田晃一社長、以下:トライアル)の「スマートショッピングカート」、イオンリテール(千葉県/井出武美社長)の「レジゴー」は、すでに水平展開のフェーズに入っています。

 3者3様の考え方があり、それぞれにメリットがあります。一方で課題もそれぞれありますが、いずれもレジの作業集中を分散させるアプローチとしては確実な方法です。3者の22年2~3月時点の現状を、6つの観点で比較してみます。以下の比較ではスキャン&ゴーを「U.S.M.H」、スマートショッピングカートを「トライアル」、レジゴーを「イオン」と企業単位で表記します。

①導入店の状況

  • U.S.M.H:グループほぼ全店+イオングループ他社
  • トライアル:グループほか58店・6019台
  • イオン:グループ計108店(イオンリテール70店超)

 U.S.M.Hは、スキャン&ゴーをすでに店舗の標準機能としています。いち早く普及した要因は、顧客のスマホを活用し、端末への投資を不要としたことです。顧客のスマホに依存するので、端末の更新費用もかかりません。あらゆる機器には耐用年数があり、それ以前にも性能は時代遅れになりがちなため、端末には定期的な更新がつきものですが、スキャン&ゴーはアプリの更新だけで済みます。

 イオンリテールのレジゴーも、21年4月にアプリ版の提供を開始しました。ダウンロード数は2月末で25万件となっています。

②導入店の利用割合

  • U.S.M.H:数%
  • トライアル:43.9%
  • イオン:20%

 U.S.M.Hは顧客のスマホに依存することで導入店舗を一気に広げましたが、利用率には課題があります。自身のスマホにアプリをダウンロードし、IDを作成し、決済手段とひも付けする…。利用開始までに強い意志が必要なプロセスではあります。ただ、カスミ(茨城県/山本慎一郎社長)の最新店「BLANDE研究学園店」(茨城県つくば市)では、オープン1週間でスキャン&ゴーの利用率が20%を超えました。店の作り方や顧客の認知次第で状況は変わりそうです。

 カートと一体のトライアルの仕組みは、高い利用率につながっています。これだけ使われるとレジの人時は20%削減されるといい、セルフレジと比較した場合の客数も1時間あたりで4倍さばけるそうです。利用者の51%は50歳以上と世代の壁もなく、来店頻度は13.8%高まるといいます。

 イオンリテールでは、利用者の買上点数が15~20%上昇し、客単価のアップに寄与しています。利用率20%のうち、3%は前述のアプリ利用者です。

③決済手段

  • U.S.M.H:アプリ連携のキャッシュレス諸決済
  • トライアル:プリペイド式電子マネーのみ
  • イオン:キャッシュレス諸決済+現金

 U.S.M.Hとトライアルが完全キャッシュレスかつレジレスの仕組みであるのに対し、イオンリテールは専用精算機で決済処理が必要です。その手間がある反面、現金での決済も可能なため利用者の間口を広げています。

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