リアルの逆襲? 米小売市場、 出店ブーム の深層
2016年以降、米国では店舗閉鎖が急増し“小売業界の黙示録”とも形容されるほどであったが、新型コロナウイルス(コロナ)禍では倒産した企業の撤退や不動産価格の下落を追い風として、店舗数を拡大する企業も増えている。コアサイト・リサーチ社によると20年の閉店数は8953店、新規出店数は3298店。今年に入ってからは、3月時点の累計で閉店数2548店に対し新規出店数は3199店と、出店件数が上回っている状態だ。出店をとくに積極化している業態を中心に動向をレポートする。
積極出店と新業態開発を推進するダラーストア
積極出店を続けている業態の1つが、ダラーストアだ。もともと店舗事業への依存度が高くEC売上はほとんどない業態だが、生活必需品を低価格で提供する小型店を武器に生活圏に入り込んでおり、コロナ禍の恩恵を受けている。
業界トップのダラーゼネラル(Dollar General)は今年度中に1050店を出店、1750店を改装し、中長期的には現在の2倍の店舗網を“構築するチャンスがある”と発表した。また、20年10月に「ポップシェルフ(Popshelf)」という新フォーマットを開発し、今後拡大する計画だ。ポップシェルフは生活必需品や実用品が中心の既存フォーマットとは異なり、シーズン商品、インテリア雑貨、ヘルス&ビューティケア、パーティー用品など幅広い商品を扱い、買物する楽しさと手ごろな価格を提供する。ターゲット顧客は年収5万~12万5000ドルの、米国では“中の上”の所得層である。

一方、業界2位のダラーツリー(Dollar Tree)は、今年度中に傘下のファミリーダラー(Family Dollar)を含め600店舗を新規出店し、ファミリーダラーでは1250店を改装する計画を発表した。ダラーツリーとファミリーダラーはそれぞれ異なる顧客をターゲットとしており、前者は郊外の中所得世帯をターゲットに基本的には1ドル均一(最近は上限を5ドルまで広げる店舗もある)で生活必需品だけでなく季節性の高い雑貨やインテリア雑貨も提供し、“宝探し”的な楽しさのある売場づくりを志向。一方のファミリーダラーは農村部や都市部の低所得世帯をターゲットに、食品や日用品など生活必需品を10ドル以下で提供している。
さらに、両フォーマットが共同出店する新たなタイプの店舗も開発、ダラーツリー単独では出店できなかった人口3000~4000人の小規模な町や農村部の集落など50カ所への出店を試みる。
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