ウォルマートがコロナ禍で成長できる理由 店舗網をフルフィルメント網に大規模転換!

大島誠(パナソニック)
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新型コロナウイルスが感染拡大した2020年は、あらゆる業界で大きな変化が求められた1年だった。小売業もその例外ではない。しかし、コロナ禍で急に慌てて対策しているようでは遅いのだ。本稿では、この1年の米国小売業の動向を概観しつつ、コロナ以前からニーズの変化に敏感に反応し、さまざまな施策に取り組んできたウォルマート(Walmart)の戦略を解説し、日本の小売業が学ぶべきポイントを提示する。

ウォルマートが掲げたコロナ禍の5つの方針

 新型コロナウイルスの感染拡大により米国がロックダウンした約1年前、多くの小売店舗は休業を余儀なくされ、多くのメディアでは食料品店などが入場規制をしている様子が取り上げられた。なかには、入場規制のために入口に信号機を設置している店舗もあった。

 このような対応は、コロナ禍における特別なものだと指摘されがちだ。また、カーブサイド・ピックアップを含む店頭での商品受け取りや自宅への配達のニーズの増加に対応するため、新たな設備や仕組みなどを急いで考え、対策を講じる必要に駆られている企業もあった。そのほか、1年前の春先にはいくつかの小売業の破綻や倒産が立て続けに報じられたが、その原因はコロナ禍で経営が立ち行かなくなったからだと結論付けられているケースも多くみられた。しかし、多くの場合、こうした考えは見当違いである。

walmart コロナ
ウォルマート本社ビルの様子。以前は広大な駐車場に車かびっしりと停車されていたが、コロナ禍では在宅勤務が進んだためほんの数台のみとなっている

 ウォルマートのCEOであるダグ・マクミロン氏は、NRF(全米小売業協会)やCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)のカンファレンスなど多くの場面で、「①従業員の安全の確保」「②サプライチェーンをストップさせない」「③社外の人(テナントや仕入れ先、他業界の就労者)を助ける」「④社内オペレーションを確実に回す」「⑤戦略を推進し続ける」というコロナ禍における5つの方針について言及している。

 これらの項目番号が優先順位を示していることに着目すると、ウォルマートは最も重要な方針として、

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