社長交代のしまむら 株価が暗示する、事業立て直しの切迫度と被買収のシナリオ

椎名則夫(アナリスト)
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潜在的買収者は誰か?

 ではしまむらの買収を検討する人はいるのか、以下の3つの可能性について考えてみたい。

 第一に、マネジメント・バイアウト(MBO)。経営陣等がしまむらの株を買い占め、非公開化する可能性である。従来しまむらは外部の仕入れ業者と緊密に連携してPBを展開してきたが、ここからさらに進んでPBの製造小売に展開し、アパレルの上流工程を管理していきたいとするならば、一旦株式を非公開化し、会社の仕組みを抜本改革して、準備ができ次第再上場するという選択肢を考えているはずである。

 第二に、プライベートエクイティ(PE)ファンド。経営に外部の血を入れ、リストラすべき事業・店舗をしっかり整理・再構築し、商品開発・サプライチェーンマネジメント・在庫管理に最新の手法を持ち込むことで収益性を劇的に改善できるという確信があるPEファンドであれば、買収に手をあげて不思議はない。

 第三に、隣接業態の小売事業者。しまむらのPB調達力、ロジスティックス、全国にまたがる店舗網に魅力を感じ、かつ商品的に補完が可能な他の小売事業者がいても不思議はない。EC事業者が実店舗の販売チャネルを求める場合も想定される。

短期有価証券1470億円の資金使途を明示すべき

 買収の可能性に加えて、アクティビストの出現も考えておくべきである。実は、先ほどのEV/EBITDA倍率の計算根拠は次のようになる。

 分子=株式時価総額2800億円+有利子負債ゼロ−現預金270億円−短期有価証券1470億円=1060億円

 分母=営業利益会社予想259億円+減価償却費会社予想54億円=313億円

 つまり、しまむらのEV/EBITDA倍率が低いのは、株式時価総額の半分を占める短期有価証券があるからであり、おそらくこの大半は譲渡性預金だと思われる。

 アクティビストがここに着目して、特別配当ないし自社株買いを要求してくることも十分あるのではないか。

 一方でしまむらの経営陣としては、業績が伸び悩む今こそこの預金(と負債余力)をM&A(合併・買収)を含めた事業展開に有効活用したいはずだ。この短期有価証券の使途をしっかり示さなければ、逆に株主・投資家からのさまざまなアプローチが増えていかざるを得ない。社長交代を機に、ぜひバランスシートの活用をしっかり包摂した経営戦略の提示を行うことが、しまむらの株主全体を納得させるには必須だと考える。新経営体制に期待するところである。

 

プロフィール

椎名則夫(しいな・のりお)
都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。
米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師

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