上場後初の四半期決算が赤字のインスタカート、今後の見通しは?

文:在米リテールストラテジスト:平山幸江
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2012年6月に食品配送サービス業として創業したインスタカート(Instacart)。それから11年経った現在、推計の総取扱高はネットスーパー業界上位3ブランドという地位を固めるまで急成長した。同社の戦略をみていきたい。

上場後初の3Q決算は赤字に

 まずは米国におけるネットスーパーの企業別売上高の推計を確認しておきたい。eMarketerが2022年8月に発表した22年度の予測数値は、1位がウォルマート(サムズクラブとの合算)で387億ドル、インスタカートが306億ドル、アマゾン(Amazon.com)が295億ドルとなっており、インスタカートはトップ3の地位にある。

 インスタカートは23年9月18日にナスダックに上場し、11月に初めて四半期決算を報告、23年7-9月期(23年度3Q)売上高は7億6400万ドル、対前年同期比7.2%増、粗利益高は15.7%増だった。しかし上場前の2Qまでは黒字化していたのに3Qは26億ドルの株式報酬費用の結果、当期利益は約20億ドルの赤字に転じた。ニック・ジョバンニCFOは24年度中には黒字化するとコメントしているが、後述するように、他の配送サービス企業と同様に、黒字化が容易ではないという構造的課題も浮き彫りになった。

 上場前の目論見書である「Form S-1」によると、収益モデルは総取扱高(GTV)が100%の場合、総売上高はその8.8%、内訳は配送サービスやプラットフォーム使用料等約6.3%、広告収入約2.6%だ(四捨五入の関係で8.8%にならない)。収入原価の2.5%を差し引くと、GTVに占める粗利益率は6.4%となり、GTVが巨大化しても同社の実入りは少なく、高い利益をあげるにはハードルが高いことが伺える。

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大手、中規模リージョナルSMのオンライングロサリー事業の受け皿になっているインスタカート

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 同社のGTVはコロナ禍で19年度末の約50億ドルから20年度末には約210億ドルと4倍になった。この成長力を支えるため21年以降、さまざまな戦略を実行している。21年7月には

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