ユニクロのカシミヤとジンズのメガネに共通する、破壊的イノベーションの起こし方とは
ジンズの逆転戦略はメタバースを大衆化し
使える技術に昇華することだ
どのような新しい技術でも、キャズムとよばれる大衆化に至るまでに陥る「溝」があり、多くの企業は、このキャズムに落ちて死んでゆく(つまり、一般化しないまま消えていく)。
今、「もっとも残念な技術」と呼ばれるメタバースで、この領域に投資をすることを表明した企業は等しく株価が下落している。ちなみに、Appleのゴーグル、Apple Vision Proが使う技術はメタバースでなく、AR、VRの技術である。
メタバースはロールプレイングゲームなどへの親和性は高いが、映画「マトリクス」の世界で行われているように、現実の我々とは別の仮想世界が現れるなどということは絶対にない。現実とバーチャルをわけるものは、現実の世界ではお腹がすくし、冬になれば寒くなる。こうした生活必需品のやりとりがバーチャル空間ではできないのだ。
だから、ドラゴンクエストしかり、死んでも教会にいけば生き返るし、痛みもなければうつ病にもならない。
メタバースリテイリングであるとすれば、今後、過疎化が進む遠隔地にお住まいの人でも購入ができるような空間への出店ぐらいだろう。
しかし、これとて、やまのように存在するプラットフォームの主導権争いにより、一体何種類のゴーグルがいるのかわからない。
私は、メタのオキュラスクエストを買ったのだが、すべて外国のコンテンツばかりで、それはそれで楽しいのだが、例えば渋谷の街を闊歩したり、セレクトショップでお買い物をしたりなどできない。対応しているソフトがないのだ。一つおもしろいと思ったのは、オフィスで、これなら世界中の人とバーチャルオフィスで話し合いができる。しかし、そこに登場するのは自身のアバターで、服など買って似合うか似合わないかもわからない。その点、Appleがさすがと思ったのは、いきなりメタバースにぶっ飛ぶのでなく、まずは、リアルの物体とバーチャルな物体の融合からはじめているようだ。これなら、試着もできる。
このメタバースが広がらない最大の理由は、試してみれば納得すると思うが、30分もかけていると重く首が痛くなる上「VR酔い」をするゴーグルにある。
このように考えてみると、メガネのジンズが次に出す最大のキラーアイテムは、通常のメガネと変わらない超薄型の「メタバースゴーグル」なのではないだろうか(ちなみにジンズは、度付きメガネ利用者でも快適にメタバースに没入できる視力矯正レンズのアタッチメントは販売済みである)。
本日は、「使い捨てコンタクト」と「ユニクロのカシミヤ」、そして「用途別メガネ」がすべての消費者のライフスタイルを変えたというところに、売れない時代に売れる商品を作るための秘訣をお話しした。なお、田中社長とのお話は7年前のことであり、一部不正確な記述があればご了承いただきたい。指摘いただければすぐに修正したい。
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プロフィール
河合 拓(経営コンサルタント)
ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
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