ユニクロのカシミヤとジンズのメガネに共通する、破壊的イノベーションの起こし方とは
ジンズのメガネを何本も買ってしまう理由
田中社長は、常々メガネのバリューチェーンの中で最もコストがかかっているのは、レンズの加工にあることに目をつけていた。ジンズのメガネが誕生する前、メガネといえばレンズとフレームを併せれば4万円から5万円ぐらいまでコストがかかるのが普通だった。だから、目の悪い人はメガネを買ったら一生ものとはいわないまでも、視力に変化があるまで後生大事に使うのが普通だった。
田中社長は、他のメガネチェーンが、沢山のレンズから選べるようにしているやり方をやめて、レンズメーカーを絞り込んだ。大量にレンズを一社から調達することで規模の経済がきいて、レンズの価格を下げることに成功した。
また、フレームの形状も工夫することで、レンズのさらなる低価格化を実現した。これまでフレームにはたくさんの形状があったため、それにレンズを合わせるために余分な加工技術とコストがかかっていた。それをいくつかのパターンに標準化することで、いくつかのレンズといくつかのフレームが合うようにした。そうして最もコストがかかるレンズの加工とレンズの単価を下げることで、メガネの価格を安くしたのである。
田中社長の戦略はここでとまらない。
「なぜ、メガネは一人一つしか持てないのだろうか?」
このシンプルな問いかけは業界で、何年も放置されていた。まさに、思考停止がイノベーションを阻害してきたのである。
メガネを掛け替えるオケージョンは無限にある!
最近は、レーシック手術など医学の進歩でメガネをかけない人が増えてきた。しかし、私はメガネはファッションの一部だと思っていて、なんと数えてみたら20本も持っていた。
ファッション用途だけでなく、老眼が進んでいるため、コンタクトレンズをしていても、近くやスマホの文字が見えない。本も読めないとなると、近視用のコンタクトに遠視用のメガネが必要になってしまう。また、馬鹿馬鹿しいと思われる方もいるかもしれないが、仕事をするときメガネをかけると、なんとなくスタバでMacを開いて得意顔になっているのと同じようなスタイルが感じられておもしろい。
また、自分のスタイルを変えるよう、ビジネス用の無色透明なメガネ、カジュアル用の色つきメガネなど、さらに、クルマの運転用にはかなり濃いサングラスに度をいれて使っている。このように、ユニクロのカシミヤセーターを複数色買い足すかごとく、昔高価だったメガネを、コーディネートに合わせて複数本買うことができるのだ。
田中社長は、(あくまでも当時ではあるが)人がメガネをかけるオケーションは考えればいくらでもある、と語っていた。