「ラルフローレン」と「ユニクロ」が同じである理由とZ世代に対する誤解が生む悲劇
私たちは、世の中の変化を見ながら、最も簡単に「ブランド」を作ろうと考える。だが、こうしたプロセスから生み出される「ブランド」は、そろそろ名称を変える時期にきている。その理由について説明するとともに、Z世代に対する誤解が生む悲劇について語ろうと思う。

「ブランド」とはそもそも残酷な
「区別」するためのもの
そもそも「ブランド」とは、極めて残酷で非情なものである。わかりやすくいうと、自分と相手を分け隔てるための手段である。
例えばイギリスでは、話し言葉のアクセントだけで、その人が上流階級か中産階級か、はたまたそれ以下なのかを区別するようだ。また国際線の飛行機に乗れば、ファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミークラスと3階層にシートが分かれており、その違いは単に企業の交通費だけでなく、明確にそのシートに乗る人を区別している。だから、会社の社長がエコノミークラスに乗ると、仮にビジネスクラスの方が何らかの理由で安かったとしても、組織の中で上司以上のシートに乗ることは許されないことが多い。私も、幾度も「CxOがエコノミーで来るのだから、ビジネスには乗れません」と、言われたものだった。
だからこれは、単にコストの問題だけではなく、人を区別する世界の常識なのだ。そしてブランドは、「着ているもので、自分とその他の違いを表す手段」として欧州で作られた。
古い話となるが、映画「タイタニック」では、由緒正しい家柄に育ったご婦人達のお茶のみ話に、いわゆる「成り金」婦人が仲間に入れてもらえないシーンがあった。いくらお金を持っていようと、そして、いくら台所が火の車でも、血統がその人のクラス・階層を決めるのがイギリスの常識だったという一幕だった。
では、日本人にとってのブランドとは何かを、服の観点から考えるとどうなるだろうか。
河合拓のアパレル改造論2021 の新着記事
-
2022/01/04
Z世代の衝撃#4 Z世代を追えば敗北必至!取るべきトーキョー・ショールーム・シティ戦略とは -
2021/12/28
Z世代の衝撃#3 既存アパレルが古着を売っても失敗する明確な理由とは -
2021/12/22
インフルエンサー・プラットフォーマー「Tokyo girls market」驚異の戦略とは -
2021/12/21
プラットフォーマー起因の歪な過剰生産が生み出す巨大ビジネス、SheinとShoichi -
2021/12/14
Z世代の衝撃#1 ライブコマースで「インフルエンサー・マーケティング」が失敗する衝撃的理由 -
2021/12/07
TOKYO BASEがZ世代から支持される理由と東京がショールーム都市になる衝撃
この連載の一覧はこちら [56記事]

ファーストリテイリング(ユニクロ)の記事ランキング
- 2025-05-09ユニクロ過去最高益を更新 トランプ関税への備えと個店経営強化が示す意味
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2025-03-12ユニクロ以外、日本のほとんどのアパレルが儲からなくなった理由_過去反響シリーズ
- 2025-03-11アパレルの離職率低下を防ぐためにやるべきこと、やってはいけないこととは
- 2019-09-30ユニクロ柳井正の失敗の美学
- 2021-04-06脱トレードで問題解決業をめざせ!アパレル商社の生き残り戦略が「デジタル」ではない理由
- 2021-11-16「ラルフローレン」と「ユニクロ」が同じである理由とZ世代に対する誤解が生む悲劇
- 2022-03-15アパレルをオワコン化させているのは「人災」であるこれだけの理由
- 2023-07-31「画期的なことより正しいことを」 水使用量99%削減したユニクロのジーンズ開発者に聞く
- 2023-08-28ユニクロと東レとのサステナブルな関係から生まれたリサイクルダウン
関連記事ランキング
- 2025-04-21従来型のカイゼンは限界に……賃上げをめざすアパレルチェーンが急ぐべき構造改革の要諦
- 2024-09-17ゴールドウイン、脱ザ・ノース・フェイス依存めざす理由と新戦略の評価
- 2025-05-09ユニクロ過去最高益を更新 トランプ関税への備えと個店経営強化が示す意味
- 2025-03-04青森ダウンなどSANYOCOATの10~20万円の高額アウターが飛ぶように売れる理由
- 2025-05-12ユニクロとしまむら、フェーシング数量に見るロジスティクスと商売哲学の違い
- 2023-08-08EC時代にスクロールとベルーナだけ好調 生き残るカタログ通販、死ぬカタログ通販
- 2024-06-19インバウンドで最高益続出!日本人が知らない「百貨店の価値」とは
- 2025-04-24業態別 主要店舗月次実績=2025年3月度
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2023-01-11セールしない、余剰在庫もないアパレル「アルページュ」 会社もお客も「幸福な」理由
関連キーワードの記事を探す
ユニクロとしまむら、フェーシング数量に見るロジスティクスと商売哲学の違い
従来型のカイゼンは限界に……賃上げをめざすアパレルチェーンが急ぐべき構造改革の要諦
消費と社会の「多変数複雑系」な変容に直面するアパレルビジネス