アパレル全滅時代を救う 過剰在庫問題を解決する、シンプルかつ確実な方法とは

河合 拓
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自宅の食卓でお腹いっぱい食事をしたとする。その時、突然、Uber EATSでフルコースの食事が配達されたら、皆さんはどうするだろうか?

SDGsの観点から、フードロスの問題がこれだけハイライトされている状況だ。「もったいない」とばかりに、お腹に入りそうなものを選んで、なんとか詰め込む人も多いことだろう。当然、食べ切れなかった分は、冷蔵庫や冷凍庫で保存されることになるし、自身も胃薬を飲むことになるだろう。

これが1日や一食だけの話なら、それで終わりだ。だが、これが(自分の意志とは別に)毎日続くことになれば、どうなるだろうか。結局は、過剰食品として毎日捨てられることになるだろう。

同じことが起こっているのが、いまのアパレル業界なのである。

Björn Forenius/istock
Björn Forenius/istock

私たちの経営環境を理解する

 環境省のHPによれば、2019年のアパレル製品の新規投入量は「35億点」(売上ではない)と記載されている。しかし、同省のHPによれば、国民が年間に購買する衣料品は一人18点とのこと。つまり、ざっくり計算すれば20億枚。赤ちゃんやご老人など、服をあまり買わない層を計算にいれ、仮に1億人とすれば18億枚だ。つまり、国民は18億枚しか購買しないのに、毎年35億枚(購買数の2倍)の商品が市場に供給されている。

新品だけではない。繊研新聞社試算によれば、いわゆるC2Cのマーケットは衣料品を含むすべての物販で2兆円。現在、その詳細を算出中とのことだが、この中の衣料品の割合を、メルカリの全トランザクションにおける衣料品割合である40%を当てはめると、2兆円×40%8000億円となる。

これは、かなりラフな計算であることを承知の上で書いている。しかし問題解決というのは、まずは大きな全体感をつかみ戦略の方向性を見定めてから詳細に入ってゆくアプローチが必要なのだ。

次にこの8000億円(仮)のCtoCアパレル市場について、私はメルカリに出店している商品の正規上代に占める単品単価の割合を(30個程度ではあるが) アトランダムにだして平均値を算出した。結果は、メルカリで売られている商品のオフ率(値引き率)は、正規上代の約90%のディスカウントだった

ここから得られる示唆は、C2Cだけで8000億円なのだから、ここにサブスクやオフプライスなど二次流通全体を加えると二次流通の枚数は約1兆円規模になると想定され、この市場規模が90%オフ率の結果とすれば、総額約10兆円規模 (新規商品と同じ数) の枚数が流通していることになる。

今、新規投入の市場規模は、同繊研新聞社によれば輸入統計(現在、繊維製品は98%が輸入なので、輸入統計がそのまま市場規模となるというロジック)から算出され、8.5兆円から9兆円といわれ、環境省の10兆円より縮小している統計もでているほどだ。

これが、輸入統計であることからC2Cは除外されると考えると、「恐るべき事実」が見えてくる。つまり、新規に輸入されている商品点数に相当する量が、消費者同士による物々(ぶつぶつ)交換で取引されているのである。これでは、企業がいかなる努力をしても売れるはずがないのである。

私は当初、環境省HPに掲載されている「半分が残っている」という試算に懐疑的だったが、こうした事実を冷静に考え,考察を進めてみれば、あながち作った数の半分は売れずに残るという試算も「現実ではないか」と思うようになってきた。 

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