アパレル全滅時代を救う 過剰在庫問題を解決する、シンプルかつ確実な方法とは

河合 拓
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いかにして、企業に新規投入の70%削減を実現するか

 丸井グループのように、自ら「脱物販」を掲げる企業もあるが、総じて、企業の多くは、未だに物販による「売上至上主義」から抜け出せず、また、それはある意味当たり前でもある。

したがって、企業ごとにバラバラに自社利益誘導施策をとり、これが正しいと信じているわけだからバリューチェーン全体の全体最適には行きつくはずもなく、もはや「お上」の産業政策と輸入関税などによる国家戦略に頼るしかない。 流通のど真ん中で改革の経験をした人間であれば、よくおわかりだろう。

 そもそも、企業が自由に営利活動を行うことが許されるのが自由経済のルールなのだから、それを制御する政策をとるべきだ。それが、私が前回掲載した企業の「残品率」に対して税金をかける案である

 残品率というのは、一定期間内における総投入量に対して「売れ残り」の点数の率のことをいう。「残品率」は「最終消化率」の逆数であり買い約定先行取引である以上、いかなるデジタル技術を使っても、極小化はできてもゼロはない。もちろん、企業の商品特性によって損金処理までの時間や評価のやり方が違い、損金処理のルールさえない非上場企業も存在するため現実的な運用は相当複雑になる。しかし、その程度の話は大した問題ではない。私にやらせていただければ、3ヶ月で調達の標準フロー Level2 (デジタル技術を見据えた業務フロー。Level3はより詳細化されたデジタル技術の要件定義)を作り上げることは可能だ。

 「サステナブル・ファッション」は、名前から想起されるイメージから(一度買った商品は長く使い、不要なものは買わないようにしましょうというイメージ)によって、アパレル産業の営業活動を止めるような響きを持っている。同時に、その意味合いも企業の都合の良いように曲解され、「土に帰る素材」や、「農薬を使っていない素材」を使えば、市場で半分しか売れないような数量を投入し続けているにも関わらず (図をもう一度みてもらいたい)、「これがサステナブルだ」と主張するなど、疑問だらけの施策が行われている気がするのは私だけだろうか?繰り返しいうが、すでに市場には新規に投入される枚数と同等、それ以上の商品がすでに流通しているのだ。半分も残るのは当たり前である。

本当にサステナブル(環境と経済を両立させる活動)な経済活動とは何か、というシンプルかつ、極めて強い問いを本日皆さんに提起した。

ぜひ、私たちの住む環境と共存できるすばらしい環境をつくりあげてゆこうではないか。

 

*河合拓単独ウエビナーを9月30日に開催! 

講演テーマは「アパレル産業の今と未来」
日時:930 10:30-
時間無制限で、産業界の課題と将来像、および、参加者との徹底討論をしたいと思っています。お申し込みは、こちらまで
https://ameblo.jp/takukawai/entry-12693219873.html

 

 

プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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