今なお世界有数の技術を持つ日本 それを破壊する小売業の構造問題とは

河合 拓
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日本のメーカーや製造工場はいまなお、世界有数の技術を持っている。それを上手に活用すれば、日本の小売業は圧倒的な差別化が可能なはずなのに、それができていない。むしろその技術を破壊してしまっている。技術を使いこなせない小売業、その構造問題を明らかにしたい。

sorendls/istock
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繊維から陶器まで 何にでもプリントできる工場

 今年、私は二社の日本の工場を訪ね、素晴らしい技術に触れた。一つは、イメージ・マジックというプリント技術を持つ、世界のトップメゾンLVMHグループに認められた、日本の隠れた宝ともいえる工場だ。(社名:イメージ・マジック、https://originalprint.jp)。

  この工場が持つプリント技術は、繊維のような柔らかいものから陶器のような固形物に至るまで、あらゆる個体にプリントすることができるというものだ。それこそ、アパレル製品だけでなく、マグカップからシャープペンシル、そして、革製品に至るまでプリントが可能だ。

 そこに「セル方式」(一つの生産フローで製造が完結する手法)とマス・プロ(大量生産)を組み合わせた独自生産技術によってBtoBの大ロットオーダーから、消費者ニーズであるパーソナル・オーダーまで対応。コロナ不況の中でも国内工場を拡張し、現在は新工場を国内に建設中という、奇跡の工場だ。僭越にも、当時、パーソナルオーダー時代の到来をあちこちのメディアで書いていた私に白羽の矢が立ち、ご招待を受け工場をお邪魔し、その技術と戦略に腰を抜かしたのが今年の1月のことだ。

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