ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営19 ポストコロナのSCがとるべき「アトラクト型マーケティング」とは
アトラクト(惹きつける)型マーケティングに移行せよ
これまでの販促活動は、とにかく「押し込む」を主眼に置いてきた。トレンドや流行を前面に出し、新しい情報を発信することで、消費者に時代遅れを意識させ、新たな商品を売り込み、そのための商品開発や販促活動を繰り返してきた。
しかし、今、我々が目にする媒体は、圧倒的にスマホでありチラシでは無い。そして価値観を共有できるyoutubeでありブログである(図表3)。企業の広告費がマスコミからネットに置き換わっていることがその現実を表している。
ところがSCの販促は相変わらず、テクノロジーの進化によって媒体費も驚くほど低廉な選択をできるにも関わらず、旧来通りのプッシュ型の施策を続けている。
何も難しいことではない。自分の日頃の生活を考えれば普段何に接触しているのか考えるだけで答えは出るだろう。
商業施設が担うべき責任と役割
最後の疑問「なぜ、プロモーション活動を販促と呼ぶのか」だが、これはSCなどの商業施設の運営に小売企業が深くかかわったことと売上歩合制賃料の仕組みに起因する。「売上を上げる」目的のために行う活動だから「販促」と呼んできたのだ。
しかし、SC運営者である賃貸人はそもそも販売活動を行っていない。だから売上を上げることを目指す活動には限界がないだろうか。
商業施設の役割と責任は、①入居するテナントの販売機会をいかに提供するか、②テナントの売上高をいかにサポートするか、③来場したお客さまに快適で楽しい時間を提供するか、そして、④お客さまに「もう一度来たい」と思っていただくか、ではないだろうか。
販売はテナントに任せ、商業施設には、この役割と責任を果たすためのプロモーション活動を期待したい。
西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役
東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員、渋谷109鹿児島など新規開発を担当。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒、1961年生まれ。