キーワードは“大きなD2C”とサステナブル、3つに割れる百貨店…2021年のアパレル業界はこう変わる!

河合 拓
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2021年サステイナブル経営はこうなる

モノが満たされた時代に、人はどんな生活様式を送り、そこに服はどのように位置付けられるのか、これを考え抜き企業としての哲学を提示することこそがサステナブル経営の本質である(Rawpixel / istock)
Rawpixel / istock

「過激すぎてイメージが持てない」と酷評された私が提案する二次流通市場も、既にいくつかのアパレル企業は検討を始めている。秋冬の衣料品投入は半減され、2021年の春夏からの新規生産は、減少(reduce)、衣料品の買取り(reuse)、と再販(recycle)の3Rを始めるだろう。こうしたアパレル企業の業態転換は、商社の売上を激減させることになる。だから、繊維商社はビジネスモデルの転換をしなければならないし、それがデジタルSPAなのだ。

  私は、ファーストリテイリングはそろそろ自社工場を持ちVMI (Vendor management inventory 供給業者が在庫水準点管理を行って自動供給する形態)を拡大し、商社を外して自社流通とし、一層のコスパを実現すべきだと思う。もちろん、もう検討を始めているかもしれないが。私は、これを(スタートアップによるD2Cを小さなD2Cと称するなら、「大きなD2C」と呼んでいる

  有識者の中には、この原料は良いが、この原料はダメという人もいるが、化合繊維の原料のほとんどは化石燃料だし、セルロース系繊維は森林伐採により生産されることを知っているのだろうか。つまり、素材のほとんどは自然破壊に繋がっており、その意味では人間の経済活動そのものが自然と調和していないという前提に立って、可能な限りムダな生産活動を止め、人が必要としている最小限の商品供給をしDurability(耐性)の高い商品を長く使うこと、そして、そういう生活を提案することがサステイナブル経営の本質だと私は思うのだが、「この素材はどうだ、あれはどうだ」など、やや的を射ない議論が繰り返されているように見える。

  トレーサビリティと二酸化炭素排出の問題はもっと深刻だ。地球温暖化や新種ウイルスの脅威、さらに自然災害や戦争まで、行き過ぎた経済活動に対する自然の警告はこれからも続くだろう。デジタル技術とサステイナブルの関係は、マーケティング的な観点から論じるのでなく、経済活動の最大効率を実現させるためにはどうすべきか、という視点から組み立てるべきでそこに成功のヒントがある。

  私は、アフターコロナの時代でも、リモートワークは進むがECは拡大しないとすでに書いた。理由は、消費者はECの利便性はビフォーコロナの時代から知っていたからだ。しかし、世の中の状況を見ると、コロナ対人類の闘いは、まだしばらく続きそうだ。完全解決を待っていれば企業はもたない。結果、体力ある企業は加速度的にECに力を入れ、EC化率は拡大し50%に近づくだろう。しかし、ECは単品訴求、リアル店舗は世界観訴求であり、EC化が進めばユニクロなど単品完成度が高く、価格が圧倒的に安いブランドや商品が大勝ちすることになり、品質はそれほどでもないが、世界観全体で戦ってきたブランドは大負けすることになる。信頼できる筋からの情報によれば、米国のフォーエバー21、ヴィクトリアズシークレットの破綻は、そうした社会背景があったということのようだ。

  さらに、ファイナンス理論も変更が必要かもしれない。これまでは借金をしてでも現金を確保し、営業活動で増やすことができれば合格というROE経営が正しいとされた。だが、企業はパンデミックやリセッションに備え、一定程度の営業活動の蓄えを持つことが重要になった。それが、危機的状況下において生き残るための必要条件だからだ。

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