アパレルをオワコン化させているのは「人災」であるこれだけの理由

河合 拓
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ファッション業界復活には30代の活用が不可欠

本質的な分析でいえば、ファッションとは残酷なもので、サステナブル(同じ力で生き続ける)ではないという宿命を、我々は忘れがちで、中々「損切り」ができない。優しくいえば、ブランドが囲い込んだ顧客は、ブランドパワーが強いほど簡単には離れず、従ってブランドチェンジは極めて難しく、新しくブランドを作り直した方が早い。ファッションとは、浮き沈みが激しく、出ては消える泡のようなものなのだ。

私は今、アパレル業界の次世代教育をやっているが、参加者の最大の悩みは「上司が、全く言うことを聞いてくれない、邪魔をする」だ。30代の人間は、中間管理職を通してしかトップにものを申せない。また、万一トップにリアルな話をすると、中間管理職から瞬殺で電話がかかってきて「俺はきいてないぞ」と怒られる

内部にいる若手は、全く実力が発揮できず40代でようやく課長になれるかどうかの出世争いで社内政治に精を出すしかない。

 

企業戦略にも課題がある。今は、ネクタイ、ドレス系革靴、スーツ、ブラウスを販売している企業は相当苦しい経営の舵取りを強いられている。だが、「ファッションの残酷さ」「浮き沈み」を知っていれば、業態転換や再構築を行う時間はいくらでもあったはずだ。私は10年前、「ブランドで競争する技術」で「ファッションは分散せよ」とページを割いて書いているが、斜め読みして分かった気になるからこうなるのだ。

例えば、私ならZOZOに生息する恐竜の卵の孵化、そして、その後の世界化をしっかりロードマップを描き、正しい活用方法を考える(=戦略立案)だろう。

このように、「オワコン」といわれるアパレル産業のほとんどは「人災」が問題で引き起こされており、その多くは本質的にコロナではない。

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プロフィール

河合 拓(経営コンサルタント)

ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、政府への産業政策提言などアジアと日本で幅広く活躍。Arthur D Little, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナーなど、世界企業のマネジメントを歴任。2020年に独立。 現在は、プライベート・エクイティファンド The Longreach groupのマネジメント・アドバイザ、IFIビジネススクールの講師を務める。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/index.html

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