小売業のDXの現在地と「変革」のためには「購入後」の顧客体験を変える必要がある理由
DX(デジタル・トランスフォーメーション)がバズワードになって数年が経過した。コロナ禍をはじめとした外部環境の変化も手伝って、ここ数年で小売業のデジタル活用は大きく進んだものの、残されている課題も多い。小売DXは今後、どのようなかたちで実現されていくべきなのか。国内外の流通の動向に詳しい伴大二郎氏に、国内小売のDXを総括してもらった。
スマホアプリで変わる顧客体験
小売企業はこの数年、DXへの取り組みを積極的に進めてきた。デジタライゼーションによって顧客体験が変化し、顧客から見える領域では一定の成果が表れつつある。小売企業はデジタル上で情報を顧客にきちんと提供できるようになり、アプリやECサイトといったデジタルコンテンツで商品を見つけて店舗で購入するといったように、デジタルを起点としたリアルでの購買行動がスムーズになっている。また、キャッシュレス対応やモバイルオーダーの導入が進んでレジ待ちなどのわずらわしさが軽減され、店舗での顧客体験の利便性も向上した。
一方で、ビジネスモデルは従来からほとんど変化しておらず、「トランスフォーメーション(変革)」が起こっているとはいえない。また、顧客との関係性の構築やデータ活用でもあまり変化はみられないのが現状だ。
他方、SNSやスマホアプリの普及に伴い、情報流は大きく変化している。SNSは新たな顧客とつながるうえで価値の高いメディアであり、スマホアプリと共存しなければならない存在だ。一方、スマホアプリは、企業にとって重要な顧客の情報を得るためのエンゲージの場という点で、SNSとは異なる。
スマホアプリは、既存顧客に自社の情報を伝える場であり、既存顧客から情報を得る場であり、そして顧客エンゲージメントを持つポイントだ。これら3つの機能を1つに集約したスマホアプリのようなデジタルツールは、これからも確実に使われ続けるだろう。
企業でのスマホアプリの活用は、単にスマホアプリの面をつくるという段階からアプリによって顧客体験を変える段階へと着実に移行してきた。顧客体験を創出するための装置としてスマホアプリを位置づけ、スマホアプリ用のコンテンツを製作したり、アプリ会員向けのサービスを提供するなど、CRM(顧客関係管理)や顧客とのつながりに軸足を移しつつある。
小売業では、「顧客が店舗へ行く」という物理的な移動が発生するため、リアルとデジタルとの融合が重要だ。このような観点から、小売業はスマホアプリに適した業種であるともいえる。
購入後の顧客とデジタルでつながる!
デジタル化によって購入時の顧客体験が向上した一方で、
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