オーケーと戦うために3つの差別化―― 東急ストア、年商41億円の繁盛店を大改装

大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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手間をかけても出来たて総菜を提供

メーン出入口のすぐの場所に総菜売場を設置。総菜・ベーカリーを合わせて約460SKUと幅広い品揃え提供する
メーン出入口のすぐの場所に総菜売場を設置。総菜・ベーカリーを合わせて約460SKUと幅広い品揃え提供する

 次に、買い回りの良さでは、駅からの帰宅者が即食商品を短時間で購入できる売場レイアウトに変更した。

 2階部分に生鮮食品売場を移設し、1階では総菜・ベーカリー売場を、メーン出入口からすぐの場所に設置した。総菜・ベーカリーは合わせて約460SKUと幅広い品揃え提供し、改装前比2%増の15%を売上高構成比の目標に設定する。 

バラ売りの揚げ物を約40SKU販売。21時頃まで揚げたてを提供する
バラ売りの揚げ物を約40SKU販売。21時頃まで揚げたてを提供する

 総菜のなかでも力を注ぐのがバラ売りの揚げ物だ。改装前のおよそ倍となる約40SKUを揃えて、21時頃まで揚げたての商品を並べる。「多少手間をかけてでも出来たて商品を並べることで『東急ストアにはおいしい総菜がある』という印象をお客さまに持っていただき来店につなげたい」(営業本部商品統括室デリカ食品部長の金子信一氏)。

 

 そのほか、あざみ野店は、全体的に売場の通路幅を広く確保した。駅前立地で、生鮮食品やグロサリーなどのふだんの食卓に必要な商品から、総菜・ベーカリー、日用品まで揃い、ゆったりした空間のなかで買物ができる店は近隣住民から重宝されそうだ。

 オーケーは低価格実現のため、商品を絞り込み、売場はシンプルかつワンウェイを特徴としている。「品揃えと買い回りの良さ」を追求した東急ストアのあざみ野店の売場づくりは、オーケーとの差別化につながりそうだ。

2階では、生鮮食品、グロサリーだけでなく、化粧品や医薬品も販売。ワンストップショッピングを可能にしている
2階では、生鮮食品、グロサリーだけでなく、化粧品や医薬品も販売。ワンストップショッピングを可能にしている

 東急ストアの改装にかけた投資額は非公表。しかしレイアウトから内装、什器まで全面リニューアルをしていることから大きな投資額がかかっていると想定される。

 それにもかかわらず改装後の年商目標は改装前の96.5%の約39億円に設定する。この数字からわかるのは、オーケーの新店の進出が既存の食品スーパーに与える影響力の大きさだ。

 オーケーは、立地が悪く、他社の食品スーパーが撤退に追いやられた物件でも果敢に出店し繁盛店にしてしまう実力の持ち主だ。猛スピードで出店するオーケーといかに戦うのか。東急ストアだけでなく、国道16号線内側で店舗展開する企業にとって共通の課題となってくるだろう。

【東急ストアあざみ野店概要】
所在地  神奈川県横浜市青葉区あざみ野2-1-1
営業時間 6:00~25:00
売場面積 2044㎡(1階1011㎡、2階1033㎡)
従業員数 正社員25人、パート・アルバイト97.2人(8時間換算)
レジ台数 11台(うちセミセルフが9台)

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記事執筆者

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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