食品小売で一気に進む!競争に巻き込まれない新しいPB戦略とは?

小野 貴之 (ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長)
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競争型と脱競争型、PB外販の可能性

 なぜSPAなのか。SPA型の商品開発の例に挙げたチェーンに共通するのは、独自性の高い商品を生み出すことで“競争に陥らない”状態をつくり出しているという点だ。

 NBと同等の品質でありながら低価格を実現した従来型のPBは「価値=価格」であり、価格以上の価値を訴求するのが難しい。また、低価格を実現するには一定の企業規模が必要になるため、必然的に大手チェーンが有利になる。強いブランド力を持ったNBが存在するカテゴリー・商品分類においては、売場内でNB商品と競合してしまうという問題もある。

 そこで重要になるのが、「脱競争」という視点だ。他チェーンにはない高い独自性を持ったPB商品であれば、「このPBがあるからこの店に行く」という状態をつくることができ、競争自体を回避できるというわけだ。当然、そうした脱競争PBは安売りする必要もない。

 他社にはない独自価値を持った商品は、さらなるビジネス展開も可能にする。

 「クイーンズ伊勢丹」を運営するエムアイフードスタイル(東京都/雨宮隆一社長)では、自社工場で製造するPB商品を同業他社や異業種に卸す、いわゆる「外販事業」に取り組んでいる。同社のPB商品は、すでに某大手SMが導入していることで知られているが、24年2月期は取り扱い先が大きく拡大。複数の大手SM、大手 ECサイトで取り扱いが始まっている。

 エムアイフードスタイル以外にも、セコマ(北海道/赤尾洋昭社長)や成城石井(神奈川県/原昭彦社長)などがすでに自社PBの外販で成果を上げている。今後、人口減少で国内市場が縮小していくことを考えると、PBの“NB化”を進めることで、国内のみならず海外展開も可能となり、それが食品小売の勝敗を分けるカギとなるかもしれない。

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記事執筆者

小野 貴之 / ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長

静岡県榛原郡吉田町出身。インターネット広告の営業、建設・土木系の業界紙記者などを経て、2016年1月にダイヤモンド・リテイルメディア(旧ダイヤモンド・フリードマン社)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属し、小売企業全般を取材。とくに興味がある分野は、EC、ネットスーパー、M&A、決算分析、ペイメント、SDGsなど。趣味は飲酒とSF小説、カメラ

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