食品小売業29社の業績を20の指標、5か年経年で徹底分析!

松尾 友幸 (ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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コロナ後も生き残るのはどの企業か?

 今後食品小売各社は成長を続けることができるだろうか。少なくとも、コロナ禍のイレギュラーな状態が継続することはないだろう。ワクチン接種が進みコロナ禍の収束が現実味を帯びてくるなか、SMの特需は終わりが見えており、21年度では減収や減益を予想している企業も少なくない。スーパーマーケット3団体の統計調査によると、21年5月の既存店売上高実績(速報版)では、「惣菜」以外のすべての部門が前年を割り込んでいる。これからは一過性の特需に頼らずとも成長できる体制を整える必要がある。

 コロナ禍ではECの利用率が高まっており、フードデリバリーのニーズも拡大しているなどライフスタイルの変化がみられる。こういった新たな消費行動を注視しつつ、コロナ前から指摘されている人口減や人手不足、オーバーストア、業態の垣根を越えた競争などさまざまな課題にも対応しなければならない。顧客に選ばれ続けるためには、さらなる価格対応や商品開発、需要を的確に反映させた売場づくり、ネットスーパー強化などの取り組みが必要不可欠で、来年度以降はこれらに対応できる企業とそうではない企業で格差がさらに広がる可能性もあるだろう。

 こうしたなか、アフターコロナでも成長を維持できるのはどの企業なのか──。本特集では、SM、GMS、DSの営業収益上位企業のうち、一定以上のデータが収集可能な29社の経営指標を5期分掲載している。コロナ禍の影響で実力以上の数値が出た20年度だけでなく、5期分を経年で見ることで、その企業の本当の力を見極めることができるだろう。営業収益や営業利益などの主要指標のほか、企業の安定性や収益性、効率のよさなどを推し量るうえで重要な指標もピックアップした。加えて、部門別売上高構成比も2期分掲載している。

 たとえば、総資産を効率よく売上に結び付けているかどうかを示す総資産回転率をみると、今回の掲載企業のうち最新年度で最も高い数値を示したのはサミット(東京都/服部哲也社長)で3.09回だった。同社は3期連続で総資産回転率が向上しており、売上を効率よく稼いでいることがわかる。

 企業が資産をいかに活用して利益を上げているのかを示す指標である総資産経常利益率(ROA)でも、今回の掲載企業で最新年度に最も高い数値を記録したのは、サミットで13.7%だった。また、アクシアル リテイリング(新潟県/原和彦社長)も11.5%と、20年度はとくに高い数値を示したが、ここ数年も9%台を維持しており、継続して効率的に利益を確保していることが窺える。

 競合他社の経営指標を読み解き自社との違いを比較するなど、今後の経営戦略を練るうえで本特集をぜひ参考にしてほしい。

本特集で使用した主な指標について本特集で使用した主な指標について

 

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記事執筆者

松尾 友幸 / ダイヤモンド・チェーンストア 記者

1992年1月、福岡県久留米市生まれ。翻訳会社勤務を経て、2019年4月、株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア入社。流通・小売の専門誌「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属。主に食品スーパーや総合スーパー、ディスカウントストアなど食品小売業の記者・編集者として記事の執筆・編集に携わる。趣味は旅行で、コロナ前は国内外問わずさまざまな場所を訪れている。学生時代はイタリア・トリノに約1年間留学していた。最近は体重の増加が気になっているが、運動する気にはなかなかなれない。

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