小売・EC・サービスの3ヶ月時価総額増加額ランキング! 1位、2位はヤフー親会社とZOZO、メルカリも大躍進

椎名則夫(アナリスト)
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注目その2 メルカリの評価アップ

(2019年 ロイター/Issei Kato)
(2019年 ロイター/Issei Kato)

 二つ目の注目はメルカリ(4385)の動向だ。

 20206月期の通期業績を見ると、売上高は対前年度比+47%増の762億円に対して、営業利益は同▲72億円の悪化となる▲193億円の赤字になり、これだけ見るとポジティブな印象は薄い。

 しかし、4-6月期に限ると、売上高は対前年同期比+60%増の229億円、営業損益は+70億円改善の9億円の黒字となり四半期ベースで黒字転換した。これがポイントである。

 黒字転換の要因は、日米共にコロナ禍で取扱高が急増し(日本では同+40%、米国では+183%増)、経費の抑制ができたことにあり、こちらも追い風参考記録と言えなくもない。会社側も今後米国事業を中心に必要な経費投下をすると述べており、4-6月期はあくまで一時的と述べている。

 しかし、一旦獲得した既存ユーザーが定着しその利用頻度が向上すると、新規ユーザー獲得のための経費投下がしやすくなり、米国事業が中期的に黒字基調へ転換する可能性につながる。今回の決算はこのようなアップサイドポテンシャルについて株式市場に再考を促したことになる。

 

注目その3  BASEの台頭

 三つ目の注目はBASE4477)の動向だ。

 4-6月期の売上高は25億円、営業利益は6億円となり、過去2年半において2度目の四半期営業黒字化を果たした前回黒字化した2019年4-6月期の実績(流通総額167億円、売上高9億円、営業利益67百万円)とは水準が全く異なる。今回主要2事業の総取扱高は対前年同期比+132%増、対前四半期比+99%増と急増し(BASE事業310億円、PAY事業78億円、合計388億円)、その中身も新規出店の寄与にとどまらず既存店舗の取扱高も満遍なく伸びる健全なものになった小規模事業者がコロナ禍を契機にECサイトの立ち上げに動いたこと、消費者側もそれにしっかり応え好循環がうまれつつあることが、株式市場に評価されたと言えるだろう。

 

多士済々のEC事業者、基盤固めなるか

 いかがだろう。

 筆者は、コロナ禍を追い風に、アマゾン・楽天を追撃するZホールディングス、リユース市場を担うメルカリ、小規模事業者のEC参入をサポートするBASEがそれぞれ増収と利益計上の両面でしっかり成果を示したことに強く印象づけられた。物販の新しい潮流を感じざるを得ない。

 4-6月期の業績が追い風参考記録だったのか、成長軌道をワープしたものだったのかは、4-6月期までに獲得した営業基盤を盤石化できるかにかかる。筆者の見立ては、後者である。コロナ禍を通じて、ワークスタイル、消費行動、SNSなどのメディア接触のあり方が構造的に変わり、ひとびとは新しい体験を求めている。これに応えることのできる企業、そしてそのためのインフラを提供する企業は引き続き支持を集め、世の中をさらに変えていくのではないだろうか。

 読者の皆様もぜひこれらの企業の動向に注目していただきたい。

 

プロフィール

椎名則夫(しいな・のりお)
都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。
米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師

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