VAIO買収のノジマ M&A巧者の成長戦略と10年で株価6倍の理由

Pocket

ノジマがVAIOを買収

  202411月11日、ノジマはVAIO株式会社およびVAIO株式を保有するVJホールディングス3株式会社の株式を取得し子会社化すると発表しました。

 これは筆者の心に刺さるニュースでした。若い頃、「VAIO」のノートPCを使用していましたので、VAIOと聞いて郷愁と期待を持たないはずはありません。

 そして買い手がノジマであることにも興味を感じざるを得ません。筆者の居住地域では他社が撤退した後にノジマが居抜きで出店しており、いつの間にか最も身近な家電量販店になっています。ノジマといえばヤマダホールディングス(以下、ヤマダHD)とは異なる路線で事業の多角化を首尾よく推進してきた実績を持つだけに、VAIOがどのように育つのか、気になるところです。

ノジマは家電専門店業界で最高の株価パフォーマンス

  ノジマは株式市場において評価を高めている会社です。

 ノジマの株式時価総額の規模は約2200億円で、ヤマダHD、ビックカメラ、ケーズホールディングス(以下、ケーズHD)に次ぐ第4位です。

 しかし株価パフォーマンスにおいては競合を凌駕しています。

図表 家電量販店各社の10年間の株価推移
図表 家電量販店各社の10年間の株価推移

 上のグラフは2014年12月末以降の株価の推移で、それぞれ起点を100として示していますが、ノジマの株価パフォーマンスは突出しています。コロナ禍直前の201912月末から202411月末までの約5年間の株価の騰落率をみても、ノジマは2.0倍で、ヤマダHD0.8倍、ビックカメラ1.3倍、ケーズHD1.0倍、エディオン1.5倍を上回っています。

株高を裏打ちする「確かな成長」

  ノジマの株価が評価を上げている背景には、好調な財務パフォーマンスにあります。

 以下、直近通期決算を起点に遡ってみましょう。

 ノジマの場合、直近5年の売上高成長率は年率8%、経常利益同8%、総資産同12%であり、直近3年の平均売上高経常利益率は5.5%ROA5.5%、ROE15.4%と好成績をおさめています(下図参照)。

(各社決算資料より筆者作成)
(各社決算資料より筆者作成)

 この表から分かる通り、総資産を積極的に伸ばし、売上高、経常利益も着実に増加させ、しかも売上高経常利益率、ROAROEのいずれもが競合他社比較で優位を保っている企業はこの表では他にありません。

 

1 2 3 4

記事執筆者

都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。

米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2025 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態