創業家社長の食品スーパーが好調? 経営トップの経歴と業績に相関性はあるか
高齢化が進むなか、後継者不足などが影響し、企業を率いる社長の平均年齢は毎年上昇している。小売業界も例に漏れずトップの平均年齢上昇が進行するものの、創業家によるスムーズな事業承継が成されるケースも少なくない。そこで、社長の年齢・創業家出身かどうか・在籍期間などと、業績の関係について分析してみた。
小売業でも”社長の高齢化”が進む
東京商工リサーチは、約400万社の企業データベースから2024年12月時点の代表者の年齢データを抽出・分析を行い、24年「全国社長の年齢」調査を実施した。
24年の社長の平均年齢は63.59歳(前年63.35歳)に上昇し、調査を開始した09年以降で過去最高齢を記録した。70代以上の社長の構成比は34.47%(同34.11%)とこちらも過去最高になったという。同調査では「事業承継の遅れが、社長の高齢化を促す構図に歯止めがかかっていない」と指摘している。
産業別にみた平均年齢では、小売業が64.49歳で、不動産業の65.38歳に次いで平均年齢が高い業界となった。平均年齢が最も若かった業界は情報通信業の57.88歳で、産業別分類で唯一60歳を下回っている。
30年以上務めた2人の社長が昨年交代
24年の上場食品スーパーの状況を見てみると、代表取締役社長を30年超務めた名物経営者2人が、その座を後進に譲った。
1人目は、「八ヶ岳連峰経営」を経営方針に標榜し、M&A(合併・買収)により規模を拡大してきたアークス(北海道/猫宮一久社長)を40年近くにわたりけん引してきた横山清氏(90歳)だ。2人目は、卸売業から小売業に進出し、ESLP(エブリデイ・セーム・ロープライス)と製造小売業(SPF)化によりこの10年で売上を1300億円規模から2700億円規模に倍増させた、大黒天物産(岡山県/大賀昌彦社長)の創業者・大賀昭司氏(69歳)だ。
長きにわたり上場食品スーパーを率いてきた経営トップの交代は、22年、28年間その座にあったバローホールディングス(岐阜県/小池孝幸社長)の田代正美氏(現バローホールディングス会長CEO)が退いて以来のことだ。
もっとも、いずれのケースでも経営の第一線から身を退いたわけではない。
アークスの場合、横山氏が代表取締役会長・CEO、猫宮一久氏が代表取締役社長COO、古川公一氏が取締役副会長CFOを務める「3C体制」でグループ全体をマネジメントしていくかたちとなっている。つまり、横山氏は社長と会長を兼務していた以前に比べて役割分担が進んだ、ということだろう。
大黒天物産でも、トップ交代の理由を「同社グループの持続的な成長に向けて、安定した経営継承を行い、新しいリーダーシップのもとで変革を推し進め、更なる企業価値向上を目指すため」として、新たに大賀昌彦氏が代表取締役社長に就任したと同時に、昭司氏は代表取締役会長に就いている。
ちなみに、上場食品スーパーで代表取締役会長のポストを置いているのは、アークス、大黒天物産、バローホールディングスのほかには、マルヨシセンター(香川県/加藤宏道社長)があるだけだ。