農水によるフードテック推進のねらいと小売業の向き合い方

取材・文:大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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 近年、食分野の新しい技術およびその技術を活用したビジネスモデル「フードテック」が注目されている。これに対して政府も動き出し、農林水産省がフードテックを推進する新事業・食品産業部を新たに立ち上げ、技術開発や事業者支援を進めている。こうしたなか食品小売企業はフードテックといかに向き合っていくべきか、レポートする。

6つの重点領域で推進

 海外では、米国などを中心にフードテック分野への投資が加速している。その背景には、世界の食料需要が増大するなかでの持続可能な食料供給や、環境保護、食品産業の生産性向上、多様な食ニーズへの対応などを実現する新たな手段として、フードテックへの期待が高まっていることがある。

 一方、日本ではフードテック分野への投資額が米国の約2%に過ぎないという。このまままでは研究者の海外流出などが危惧されている。

(i-stock/mediaphotos)

 この状況を受けて、日本政府も動き始めた。2021年7月には、農林水産省がフードテックを推進する新事業・食品産業部を始動した。また、「農林水産物・食品輸出促進緊急対策事業のうちフードテックを活用した新しいビジネスモデルの実証に対する支援事業」が措置されるようになり、初年度の21年度で1億円、22年度で3000万円が計上されている。

 新事業・食品産業部の代表的な活動としては、産学官連携でフードテックによる課題解決や新市場開拓の促進をめざす「フードテック官民協議会」を立ち上げ、重点課題の特定や対応方針の策定を進めている。

 同協議会が23年2月、最新の方策として取り決めた「フードテック推進ビジョン」と「ロードマップ」では、「植物由来の代替タンパク資源」「昆虫食・昆虫飼料」「スマート育種のうちゲノム編集」「細胞性食品」「食品産業の自動化・省力化」「情報技術による人の健康実現」の6つの重点領域を設定。これらを、オープンイノベーションの促進やスタートアップ育成などによる「プレーヤーの育成」と、新しい技術開発にあたっての戦略的なルール・ガイドラインづくりや、消費者理解の醸成などによる「マーケットの創出」という2つアプローチで推進する考えだ。

 たとえば

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取材・文

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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