総菜、生鮮食品の強化が食品スーパーの生き残る道=マックスバリュ九州 佐々木 勉 社長

聞き手:下田健司
構成:森本 守人 (サテライトスコープ代表)
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福岡都市圏を中心に新型店舗を拡大

──出店政策について教えてください。

佐々木 現在、当社が展開する店舗は、大きく分けて4種類のフォーマットがあります。1つは、都市型SMの「マックスバリュエクスプレス」です。売場面積250~300坪の小型店で、一定以上の商圏人口を抱える都市部にフリースタンディング(路面店)で出店しています。2つめは、標準フォーマットの「マックスバリュ」。郊外立地で売場面積は600坪超、原則として単独出店はせず、おもに近隣型ショッピングセンター(NSC)のテナントとして入っています。3つめは、取扱アイテム数を絞り、効率的な店舗運営のもとで圧倒的な安さを訴求するディスカウント業態の「ザ・ビッグ」、4つめは「ザ・ビッグ」の小型店「ザ・ビッグエクスプレス」です。

 当社では、これら4つのフォーマットを立地や競合状況、商圏特性に合わせて使い分けることで集客を図っています。このうち、今後の出店戦略において主力フォーマットとして位置づけているのが、都市型の小型SM「マックスバリュエクスプレス」です。

──その「マックスバリュエクスプレス」の新型店として出したのが16年3月に出店した二日市店ですね。具体的にどのような店づくりをしていますか。

新型SMでは、こだわり商品を積極的に取り入れる
新型SMでは、こだわり商品を積極的に取り入れる新型SMでは、こだわり商品を積極的に取り入れる。青果部門ではオーガニック野菜を集めたコーナー、加工食品ではパクチーコーナーを設けている

佐々木 競争が激化するなかでわれわれの強みを明確にするため、当社はここ数年、品揃えを徐々に見直してきています。青果や日配品など購買頻度の高い商品は競合店に負けない価格をEDLP(エブリデイ・ロー・プライス)で提供しつつ、一方で味や素材などに徹底的にこだわった商品も強化することで差別化を図っています。二日市店では、こうした価格と品質を強化しました。

 さらに、それらの品揃えの変化をお客さまの視覚にも訴えかける店づくりに取り組んでいます。二日市店では、従来の「マックスバリュ」から外装、内装ともにイメージを大きく変えました。いずれも落ち着いた色で統一し、スタイリッシュな買物空間を演出しています。

──このフォーマットは今後どのような展開を考えていますか。

佐々木 現在はあくまで検証段階で、新型店のスタイルを確立させてから増やしていきたいと考えています。というのも、「マックスバリュエクスプレス」の屋号を冠する店舗は現在約20店舗ありますが、条件はさまざまで標準パターンといえるものが定まっていません。売場面積150坪の店舗もあれば300坪の店舗もあります。店舗によって立地や駐車場の規模も異なります。今後、あらゆるデータを検証し、最も競争力のあるかたちを見定め、拡大していきたいと思います。

──出店エリアについてはどのように考えていますか。

佐々木 福岡都市圏を中心としたエリアを考えています。新型店を新規出店したのは、今のところ二日市店だけなので、まずは2ケタに乗せたいと考えています。新店だけでなく、既存店を改装するかたちも含め、徐々に店舗網を拡大していく方針です。

──店舗網の拡大にあたって、物流の整備について計画はありますか。

佐々木 強い店舗網構築のために必要なのはPC(プロセスセンター)です。今後、都市部で広げていく小型SMでは、店内加工の総菜以外はPCで加工した商品を扱い、店内では簡単な作業で済ませられるような効率運営が求められます。18年秋には、佐賀県基山町に総菜と精肉を加工する機能を持ったPCを稼働させる計画です。

地域で異なる味の嗜好に対応

──商品政策の基本的な考え方を教えてください。

差別化部門として総菜に力を入れている
商勢圏ではDSやDgSとの業態を超えた競争が激しさを増している。そのなかで差別化部門として総菜に力を入れている

佐々木 各部門でこだわり商品を積極的に取り入れ、豊富に品揃えすることはさきほどのとおりですが、差別化部門と位置づけているのは総菜です。総菜を温かい状態で販売する「ホットデリカ」は、出来立てを提供することでお客さまの満足度を上げられる商品です。われわれの商勢圏では、DgSやDSが台頭していますが、そうした業態がまだ着手していないのが総菜です。総菜そして生鮮食品を強化することがこれからのSMの生き残る道だと認識しています。

──総菜部門の中でも最大の特徴となっているのが、100g当たり128円(税抜)で提供する「量り売り総菜コーナー」です。

佐々木 二日市店では常時40種類以上のメニューを提供しています。お客さまがその中から好きなものを選んで買うことができるビュッフェスタイルのコーナーです。中華、和風、洋食のほか、パスタ、サラダなど多様なメニューを揃えており、お客さまから好評です。

 本来なら同じ100gでもいくつかの価格帯を用意できれば、さらにメニューの幅を広げられます。ただ同じトレイに価格帯の異なる商品を入れるとなると、売価計算に手間がかかるため、今のところは単一の価格で展開しています。

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構成

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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