業務プロセス改革に手応え、企業規模に合わせて仕組みを変える!しまむら 野中 正人 社長

聞き手:下田健司
構成:田中 浩介
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 もちろん大都市部だけでなく、地方にも出店します。現在、1600~1700㎡の大型店の実験も行っており、これがうまくいけば売場面積の異なる複数の店舗を組み合わせてシェアを高めることができます。既存店の近くに出店をすれば当然既存店の売上は落ちますが、そのエリアでのトータルのシェアは確実に高まるでしょう。

 若者向けのカジュアル衣料を扱う「アベイル」は301店舗となりました。17年2月期は商品構成の見直しなど既存店に力を入れたため出店は5店舗にとどまりましたが、今期は積極的に出店していく考えです。

 また、ベビー・子供用品の「バースデイ」は240店舗となりました。17年2月期は「しまむら」よりも多い30店舗を出店しており、今期も同じようなペースで出店する計画です。衣料品に加えて、子供用品がひと通り揃う専門店としての認知が進んでおり、既存店は好調を維持しています。

靴専門店「ディバロ」の出店を加速させる方針だ
150坪を標準的な売場とする靴専門店「ディバロ」の出店を加速させる方針だ

 靴専門店の「ディバロ」は17年2月期に100坪以下の9店舗を閉鎖し、11店舗となりました。これからは150坪を標準店として出店を加速し、早期に100店舗体制とする方針です。

 国外では、台湾が順調です。17年2月期は3店舗を出店して42店舗となりました。今後も年間2~3店舗を出店していく予定です。中国は上海に出店しているのですが、厳しいというのが正直なところです。現在の11店舗を維持しながら、中国のマーケットに合わせた品揃えを探っていく考えです。

──国内の衣料品市場をどのように見ていますか。

「素肌涼やかデニム&パンツ」
プライベートブランドのヒット商品も生まれている。写真は「素肌涼やかデニム&パンツ」(税込2900円)

野中 国内は今が事業拡大のチャンスと見ています。衣料品業界は為替が安定せず、売上が伸びない「衣料品不況」に直面しており、閉鎖する店舗が増えていく可能性が高いからです。そのぶん、当社が出店する余地も増えると前向きにとらえています。

 国内の衣料品市場は漸減しています。今後もその傾向が続くでしょうが、枚数ベースでみると減少幅は小さいと見ています。高単価の商品が売れなくなる一方で、リーズナブルな商品へのニーズが高まっていると感じています。われわれにとっては大きなチャンスであり、「しまむら」に見向きもしなかった消費者の来店が期待できる状況にあるのです。とくに店舗の少ない大都市部には、多少無理をしてでも「しまむら」を出店していく価値はあると考えています。

 既存事業だけでなく、新しい事業を立ち上げるのも今がチャンスでしょう。M&A(合併・買収)を含めて、可能性を検討していきたいと思います。

20年2月末までに全店で電子マネー対応

──ネット通販(EC)についてはどのように考えていますか。

野中 リアル店舗ばかりを増やしていけばいずれ限界にぶつかりますから、ECにきちんと対応していかなくてはならないと思っています。

 ECに限らず、消費者が求めていることについては、できるだけ対応していきたいと考えています。今期から電子マネーを導入するためにレジを順次入れ替え始め、20年2月期末までに全店で電子マネーを利用できるようにする計画です。

 お客さまの利便性を考えると、自社ポイントや共通ポイントの導入も検討すべきかもしれません。実際に導入するかどうかは慎重に詰めていきますが、これまでのように「やらない」と決めつけるのではなく、なんでも検討していくつもりです。

──SPA(製造小売業)志向の企業が増えていることについて、どのように見ていますか。

野中 SPAであるとか、SPAでないとかをそれほど区別する必要はないと思っています。

 お客さまの生活を豊かにできる品質であり、流行を取り入れた商品を低価格で販売することが当社の使命です。これを実現するサプライチェーン・マネジメントを自社だけでやるのか、取引先を含めた複数社でやるのか、どちらであってもローコストで運営することが最も重要になると思います。

 当社は全店で販売する商品を増やしており、SPA企業並みの数量を発注する場合もありますので、それなりのスケールメリットを発揮できていると思います。

 また、われわれが扱う商品は、サプライヤーが当社向けに開発しているものがほとんどですから、今のところはSPAにこだわる必要性を感じていません。

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