服の生産が地球を壊す…一方的な「アパレル環境破壊論」にみる、正しい問題解決の手法

河合 拓
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論理力と問題解決力に乏しい日本人

 どんなものにも明暗があり、数字を自分の都合の良いように使い、勧善懲悪のような分かりやすいストーリーを作り、アパレルを「悪代官」に仕立上げて、草木染めを三つ葉葵の印籠のごとく見せる。本当に環境問題を解決したいのか、それとも流行りのアパレルいじめをしてPVを稼ぎたいのだろうか。彼らの返事はこうだった。

 「数が小さいからといって、やって良いということではないでしょう。どんなに小さいことでも問題を解決しようという気持ちが大事なのではないですか」

 問題解決の訓練をしていないこの手の人たちは、「必要条件」と「十分条件」の違いさえ理解できないのだ。MECE (必要十分条件)という概念は抽象度をあげて全体を網羅的につかみ、最初に叩くべきポイントを押さえる。もともと分析がMECEでないのだから、私は問題解決とはいえないといっているわけだ。

 世の中には「やるべきこと」は山のようにあるが、絞り込まれたすべきことはとても少ない。私が、コンサルタントになって最初にパートナー(コンサルの最高職位)の人からいわれたのは、「河合さんのような中途入社の人は、時間は有限だが、すべきことは無限だ。だからやることを絞らないといけない」ということだった。

 なんでも思いつけば、悪いことでなければやれば良いというのは、なんの戦略性もない発想である。ものごとには、そうなった歴史、および、必然性が必ずある。そして、それを改革する難しさは、そこに群がる既得権益との戦いとなり極めてタフになる。これが企業改革、そして、産業改革の最も難しいポイントだ。断っておくが、私は環境破壊や、アパレル業界の悪しき習慣、ときにルールを逸脱した商慣習に誰よりも強い批判を持ち、それを包み隠さず世に発信してきた人間である。某誌に批判されながらも3年前に二次流通を提言し、さらにその3年前に、日本のアパレルは無印良品になれ、とモノからコトへの提言をおこなってきたし、実際にプロジェクトで手がけてきた。

 アパレル産業が崩壊する前に、世界に産業の模範生として、自らの判断と価値観でプライドをもって働ける産業になって欲しいと思う。

 

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プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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