服の生産が地球を壊す…一方的な「アパレル環境破壊論」にみる、正しい問題解決の手法

河合 拓
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国の成長は繊維からスタートする

 国家の多くは、繊維産業から経済発展を始め、やがて金融・デジタルなど高度産業に軸足を移しGDPを押し上げる。

 例えば、「 東洋のシリコンバレー」と呼ばれる深圳。私が大学を出て初めて入った商社マン時代(今から30年前)に、ボーダー(香港と中国の国境)を超えた時、お年寄りが「ぎゃー」と大きな声を立て、柄の悪い連中に棍棒で殴られていたのを目の当たりにし、どうしてよいかわからなかったことを今でも忘れない。その光景に唖然としてつっ立っている私の周りに、begger (物乞い)の子供が山のように集まり、「金をくれ」と服をすごい力で掴まれた。

 ボーダー付近では、犬や猫などの生態が格安で売られていた。なんでも、香港からきた人が、ボストンバッグに犬や猫を押し込み、香港に連れ込み、香港で高く売るという説明だった。広州の工場に入るときは、さらに悲惨である。時速150キロぐらいで、ろくに舗装もされていない高速道路をかっ飛ばすタクシーに乗せられた。当時、会社からは「中国ではタクシーに乗るな、危険だ」とお達しがあったのだが、アパレルに「絶対に週末にもってこい。こなければクレームだ」と脅された私はタクシーに乗らざるをえなかった。生きた心地がしなかったことを思い出す。

 あれから30年。今や深圳は、日本など遙かにしのぐスマートシティーと化し、スターバックスでMacを前に置いて、韓流ドラマに出てくるような美男美女が艶やかな装いに身を包み、軽やかに仕事をしている。 資本主義だ、共産主義だなどとわめいているのは年寄りや政治家だけで、実態は、日本の東京・青山あたりの風景となんら変わりない。経済が発展し豊かになったのである

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