ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営16 顧客のLTVを収益に変えるための手法とは

西山貴仁(株式会社SC&パートナーズ 代表取締役)
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逸失利益の存在と多くのことを可能にするテクノロジー

 前号でも指摘したようにSC事業では、どんなに来場者を増やしても賃料だけのリターンでは限界がある。では、どうしたら良いか。それはこれまでテナントに着目し、その売上を上げ、そこから歩合賃料として収受してきたビジネスからBtoCへ業態を広げることである。SC事業は、SCという装置を作り、そこでテナントの皆が切磋琢磨によって売り上げを上げ、そこから賃料として一部を収入とするビジネスである。

 だからテナントの売上を上げることに躍起になるわけだが、実際、SCへ来場されるお客さまは生まれてから亡くなるまで多くの消費支出、もしくは貯蓄・投資など生涯価値を持つ。したがって、SCが考えなければならないのは、この来場者がSCへ来ても来なくても収益を上げる仕組みを作ることである。

 この来場者の支出する生涯価値とは一体どのようなものであろうか。それは自らの生活を顧みれば自ずと分かることである。

 今、あらゆるビジネスは、月額利用料、会員制、サブスク、クラウドファンディング、決済システム、マッチングなどあらゆるビジネスに入り込み、マネタイズすることが当然となっている。

 では、今のSCはどうか。接客力などというアナログに傾注するのも良いが、このコロナ禍の今こそ、新たな収益源を見つけるチャンスではないだろうか。

 自らの運営するSCにおいて図表5に示す「逸失利益」には何があるのか、まずは列挙することから始めることだろう。

図表5
図表5

 今や個人でさえ、人生のリスクヘッジをするため複数の収益源を得ようと副業を始めている。SCもその時代に突入したのである。

 

西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役

東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員、渋谷109鹿児島など新規開発を担当。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒、1961年生まれ。

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