激動の流通 #1 “安売り”は苦境のGMSを救うか

森田俊一(流通ジャーナリスト)
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価格競争力を失ったGMS

 「もともとGMSは“安売りの店”だったが、いつの間にか価格訴求力を喪失した」

 ある青果専門店チェーンの社長はそのように話す。同チェーンでは、毎日隣接する競合GMSの青果物の価格を調べ、それよりも安い価格を設定している。

 値付けの権限は店長が持っており、機動的に売価を決める。同社によれば、「トータルの売上高がアップすれば、特定の商品を思い切った低価格で提供しても利益が出せる」という。かつて、「業種店」と呼ばれるような小規模な専門店は、「SMが近くにできると潰れる」とされてきた。だが、この青果店チェーンはGMSと“共存”しながら勝ち残っているのである。

 現在のGMSに、このような機動力はあるのだろうか。SMやGMSは本来、「低価格」が生命線だったはず。しかし、店舗が増え、人員が増えていくうちに低価格を維持できなくなったのだろうか。その結果、「ドン・キホーテ」のようなディスカウンターの台頭を許していった。

 セブン&アイ・ホールディングス(東京都)の鈴木敏文名誉顧問はあるインタビューで「日本のGMSはアメリカ仕込みのGMSのスタイルから脱却できず、(旧態依然とした)取引慣行を引きずっている」とコメントしている。

 コロナ禍による自粛ムードが依然として続き、足元では苦戦が続くGMS。もはや消費者の購買行動が完全に変わってしまったと言える。品揃えから運営・販売手法まで、GMSはすべてを解体し作り直す必要に迫られているのではないだろうか。

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