激動の流通 #7 新体制ファミリーマートの行く末

森田俊一(流通ジャーナリスト)
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コンビニエンスストアの既存店が冴えない。コロナ禍以降、大手チェーンの既存店売上高は軒並み前期実績をクリアできずにいる。その要因は、食品スーパーやドラッグストアへお客が流れているためだ。2019年フランチャイズ加盟店の問題も噴出した。こうした中、ファミリーマート(東京都)では新年早々、親会社である伊藤忠商事出身の細見研介氏が新社長に就任する人事を発表、次のコンビニ像を模索する。コンビニはコロナ禍を乗り越え、再び成長軌道に戻れるか。

伊藤忠出身の細見氏が新社長に

 ファミリーマートは1月13日、社長交代を発表した。現社長の澤田貴司氏に代わり、伊藤忠商事執行役員で第8カンパニープレジデントを務める細見研介氏が3月1日付で新社長に就任する。

 「商社にコンビニの経営はできない」

 そう言ったのは、現セブン&アイ・ホールディングス(東京都:以下、セブン&アイ)の鈴木敏文名誉顧問だ。かつて伊藤忠商事が西友(東京都)からファミリーマートの株式を取得した際の発言である。

 鈴木名誉顧問の近くで働いたセブン&アイの元幹部は、「コンビニの経営は日々の商売の変化を読み解くことが大事。一方、商社は『商談1つで何十億円、何百億円』という仕事をしている。『ラーメンを売って日々何十円、というコンビニの経営は、商社の仕事とはまったく違う』ということを鈴木氏は言いたかったのではないか」と指摘する。

 ファミリーマート新社長に就任する細見氏は、商社とはまったく異なるコンビニのカルチャーを理解したうえで経営を推進できるか。突然の社長交代の一報に、業界は「まずはお手並み拝見」(ある卸の関係者)という雰囲気であるようだが、細見氏は会見の第一声でファミリーマートの業績向上の具体策として「商品開発」「利便性」「親しめるお店」を挙げた。

苦戦するコンビニ

 あるコンビニ関係者は「コンビニ経営では、万人が『美味い』と思う味を普遍化することが重要。『商品開発』を真っ先に挙げているのは評価できるのではないか」と話す。しかし、同時に「解決しなければならない課題も少なくない」(同)ともいう。

 その1つが、「低迷する既存店をいかに立て直すか」という難題である。はコロナ禍以降コンビニ各社の既存店売上高は軒並み落ち込んでおり、回復の兆しいまだ見えない。

 大手3チェーンでは、セブン-イレブン・ジャパン(東京都)が浮上しかけたように見えたが、このところは再びマイナスに転じている。ファミリーマート、ローソンも期初から前期比割れが続く。コロナ禍で在宅勤務となり、自宅がいる機会が増えた層が食品スーパーやドラッグストアに駆け込み、コンビニを利用する頻度が減ったためだ。

 購買行動が変わってしまった消費者を再び引き寄せるためには、時間と根気が必要だ。弁当や総菜、スイーツといったコンビニの主力商品の質向上はこれまで以上に重要になるはずだ。

浮上する“加盟店問題”

 さらにファミリーマートでは、加盟店オーナー対策も課題になると見られている。ファミリーマートはフランチャイズ契約で10年という期間を設定しており、とくに経営統合した「サークルK」「サンクス」のフランチャイズオーナーが加盟店契約を更新するか否かに注目が集まっている。

 足元ではコンビニ経営者の高齢化が進んでいるうえ、コロナ禍で他業態にお客を奪われつつある。そうした中では「契約更改をしない加盟店も少なくないのではないか」(あるコンビニ加盟店オーナー)という声も上がっている。

 前出のコンビニ関係者は「ファミリーマートにしてもローソンにしても、商品の味覚という定性的な問題に、正面から向き合うことがなによりもまず大事になるのではいか」話す。課題山積のままスタートした新体制のファミリーマートは3月移行、どのような経営を推進していくのか――。

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