良品計画 松﨑曉社長が語る 無印良品が食品を強化する理由~2030年頃までに売上構成比30%へ 

ダイヤモンド・チェーンストア編集部
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食品は無印良品の考え方を伝えやすい

無印良品の生鮮売場と「つながる市」とレトルトコーナー
(上)18~19年にかけて、無印良品は生鮮を取り扱う食品強化型店舗の出店を進めてきた(写真は無印良品 京都山科)(左)食品は無印良品のコンセプトを伝えるうえで効果的だ。「つながる市」では食品の生産のストーリーを伝えている (右)無印良品ではレトルトカレーを中心に食品の売上が好調だ

──ここからは近年強化している食品についてお伺いします。18年に増床リニューアルした「無印良品イオンモール堺北花田」(大阪府堺市:以下、堺北花田店)に続き、19年は「無印良品 銀座」(東京都中央区)、11月に「無印良品 京都山科」(京都府京都市)など生鮮食品を取り扱う店舗を開業しました。無印良品が生鮮を含め食品を取り扱う意義を教えてください。

松﨑 無印良品は基本的に日常生活に必要な商品を販売しています。しかし、これまで食品で展開していたのは、レトルトカレーに代表される「調味加工」、チョコレートやサブレといった「菓子」、黒豆茶などの「飲料」の3カテゴリーで、生活に必要な食材をすべて網羅しているわけではありませんでした。そのため、これまでの商品に加え、青果・精肉・鮮魚といった生鮮3品や味噌などの日配品も取り扱い、日常で使う食品を広くカバーする店舗として開業したのが堺北花田店でした。

 また、食品は無印良品の考え方をお客さまに示すための手段として非常に有効です。当社は商品の製造の背景にあるストーリーを伝え、人と人、人と自然、あるいは人と社会をつなげることを重視してきました。食品の場合、生産者がおいしさや安心・安全を提供するためにさまざまな工夫を凝らして商品をつくっています。このような背景をお客さまに理解していただき、消費者と生産者をつなげるためのツールとして食品は効果的です。

 たとえば、19年12月に一部の店舗で販売した「不揃いりんご」(1個99円)は、品質的には問題ないものの、傷やシミ、色ムラがあるため今までは一般に流通していなかった商品です。技術革新により同じものを大量生産できる環境があるなか、工業製品ではない野菜や果物はそれぞれ形や色が違って当たり前だという考えから「おいしさ」の基準を見直し、一般的な販売規格から外れた商品を取り扱うという試みでした。

──生鮮食品を取り扱っている店舗の売上状況はいかがでしょうか。

松﨑 どの店舗も売上高は計画通りに推移しています。生鮮を取り扱う食品スーパー(SM)としての機能を付加したことで、食品全体の売上高構成比も高まりました。堺北花田店では20%近くになる月もあります。また、通常の店舗でも取り扱っている非食品の売上も伸長しました。

 このことからわかったのは、無印良品の来店頻度はSMと比較して圧倒的に少なかったということです。この点に今後の店舗戦略の活路を見出し、SMと無印良品が一体となった店舗をつくりたいと考えました。そこで19年4月に開業した「無印良品 野々市明倫通り」(石川県野々市市)は初のロードサイド店舗で、北陸地方でSMを展開しているアルビス(富山県/池田和男社長)の敷地内に出店したのが特徴です。SMの隣に出店したことで来店頻度が高まり、売上は計画以上に推移しています。この店舗ではSM敷地内に別の建物として出店しましたが、今後はSMと同じ建物内で、食品を軸としてSMと無印良品がつながるような売場もつくりたいと考えています。

 海外では19年11月にフィンランド1号店として、首都のヘルシンキに「MUJI KamppiHelsinki」を開業しました。同店では精肉・鮮魚は取り扱っていませんが、フィンランドの約100もの地元農家や企業から仕入れた青果や日配品、加工食品などを販売しています。地元のお客さまからは、「フィンランドの商品をたくさん取り扱ってくれて嬉しい」というお声をいただいています。食品はローカルとの結びつきが強いため、地域に根付くよいきっかけになっています。

──その一方、衣料品や生活雑貨についてはどのような戦略を採りますか。

松﨑 生活雑貨では、19年2月に組織体制を見直しました。これまでは「ファニチャー」「ヘルス&ビューティー」といったカテゴリーごとの縦割りの組織でしたが、生活シーンに合わせた商品を開発しようという考えのもと、「品揃え・商品開発担当」「企画デザイン担当」「生産・調達担当」というように再編しました。この体制にしてから人員も見直し、20年秋冬には組織再編後初の商品がデビューします。個別のカテゴリーではなく生活シーン全体を考慮した商品開発を行うことで、ベッドなど無印良品がこれまで得意としてきた商品の売上拡大を図りたいと思います。

 また、海外ではその地域の性質に合わせた商品開発も始めました。これまでは日本で開発した商品のほとんどは海外にそのまま展開していましたが、中国では現地に商品部を設置しました。現地の人に合わせたベッドやシーツのサイズの見直しのほか、たとえば中国ではスリッパの底は柔らかいものは好まれないため、硬い素材に変更するなど好みや生活習慣に合わせた変更を行っています。

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