日産の新経営体制に打撃、関副COOが日本電産の新社長に

ロイター
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日産自動車、副COO関潤氏
日産自動車の執行役員副COO関潤氏は、2019年12月2日、横浜にある日産自動車本社での記者会見に出席した。(ロイター/ Kim Kyung-Hoon)

[東京 24日 ロイター] – 日産自動車の新しい経営体制を担うトップ3の1人で副COO(副代表執行役兼最高執行責任者)を務める関潤氏(58)が退職することが明らかになった。複数の関係者によると、日本電産の次期社長への就任が内定している。日産の新経営陣は12月1日にスタートしたばかりで、関氏の突然の退社は業績立て直しに向けた日産の動きを停滞させる懸念もある。

日産では2018年11月のカルロス・ゴーン前会長の逮捕以降、1年余りにわたって経営が混乱し、業績の低迷が続いている。抜本的な経営再建が急務となる中、12月から内田誠社長兼CEO、アシュワニ・グプタCOO、関氏の3人が協力して再建に取り組む新しい経営体制がスタートした。

3人を任命した日産の取締役会は新経営陣を「トロイカ(3頭立て馬車)」体制とし、関氏はその団結と協調を印象付けようとしてきた。しかし、関氏の退社でその一角が崩れることになり、日産の経営が再び混迷状態に逆戻りしかねないと懸念する声もある。

関係者によると、9月の西川広人社長兼CEO(当時)が辞任したあと、後継者を決める指名委員会の調整の過程で、関氏と内田氏は最終候補として名前が挙がった。

両氏はともに中国事業の責任者を務めたという共通項はあるが、親会社の仏ルノーとの関係では、内田氏がルノー首脳陣や日産取締役会のルノー寄りのメンバーから支持されている一方、関氏は日産の独自路線を求めるメンバーから支持を受けていたという。 結果的に、内田氏がCEOに選出され、関氏はCOOとなったルノー出身者で三菱自動車COOのグプタ氏にリポートする形で新体制人事は決着した。

退社の理由について、関氏はロイターに対し「日産を愛しているし、待遇の問題ではない」とし、「日産のために働きたいが、サラリーマン人生の最後をCEOとしてチャレンジしたい」と説明している。

関氏は今年6月に西川氏のもとで策定された同社の業績リカバリープランの推進を担当。関係者によると、計画は順調に実施されてきており、22年3月期で数千億円規模の合理化効果を見込める状況になっている。しかし、陣頭指揮をとってきた関氏の退社で、こうした業務改善に向けた動きが遅れる可能性もある。

一方、日本電産は創業者の永守重信現会長兼最高責任者(CEO)が昨年2月、当時副社長だった吉本浩之氏を社長兼最高執行責任者に選び、創業以来初めての社長交代として注目を集めた。しかし、中国市場の不透明感などを背景に業績は悪化しているため、永守会長はさらなる経営刷新が必要と判断、吉本氏に代わる社長候補を探していた。

永守会長は30年度に売上高10兆円達成を日本電産の目標に掲げており、電気自動車(EV)の普及で需要が期待できる車載用モーター事業の強化がその原動力になるとみている。しかし、同社は自動車パワーステアリング用モーターで世界市場の40%を占めているものの、電気自動車(EV)の駆動に使う重要部品のトラクションモーターのシェアはまだ4%程度。永守氏は、同モーターの世界シェアを35%に広げる目標を掲げて急ピッチで生産を増強しており、難局を乗り切る指導者として、自動車業界の製造現場に精通している関氏に白羽の矢を立てたと思われる。

日本電産を1973年に創業以来、一代で売上規模1兆5000億円の企業に築き上げた永守会長にとって、後継者探しは喫緊の課題となっている。2013年には、日産自動車の中核子会社カルソニックカンセイ(現マレリ)社長だった呉文精氏を副社長に据えた。後継者の最有力候補と目されたが、呉氏は統括していた車載や家電事業で期待された実績を上げることができず、15年に退社。その後、半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスの社長に就任した。

現社長の吉本氏は、ゼネラル・エレクトリック(GE)やカルソニックカンセイなどを経て、15年に日本電産に入社。自動車部品や計測機器を製造する子会社を立て直したことが評価され、18年6月に社長に抜擢された。しかし、このところ決算説明会には姿を見せず、吉本氏についてアナリストから問われた永守会長は「わたしの経営学を学ぶには3年から5年かかる。(吉本氏の)潜在能力は高いので、順番にきちんと学んでいくのが近道。(担当している家電・商業・産業用事業で)15パーセント(の利益率)を上げて来いというのが使命」と話していた。 関氏の社長内定について、日本電産は「ノーコメント」(広報幹部)としている。

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