そごう・西武売却決定でどうなる!?ヨドバシ、フォートレス連合が取り得る4つの打ち手とは
セブン&アイ・ホールディングスは11月11日、子会社であるそごう・西武の株式全部を、不動産投資ファンド運用会社のFortress Investment Group(フォートレス・インベストメント・グループ)へ譲渡する契約を締結したと発表した。売却額は2000億円を超えるメガディールという報道もある。フォートレスは、ヨドバシカメラの親会社であるヨドバシホールディングスをビジネスパートナーとしてそごう・西武の再生を図るとしているようだ。
フォートレスとは、アメリカの投資運用会社で、経営破綻懸念のある企業の株式や債券などを安価に買取り、価値向上を果たし株価を上げたところで売却する手法を得意とする。今日は、固く守秘にまもられた、この大型ディールの先にある世界を予見し、このフォートレスとヨドバシカメラが、どのように百貨店再建を図るのかを予見してみたい。なお、本分析は多分に私の推測が含まれており、限られた情報と私の過去の経験から得られた完全な類推であることをお断りしたい。企業、事業再生はセンシティブなことが多く、リアルに書けば書くほど内容は生々しさを増してくる。お読みになられ、不快に思われた方にはここで謝罪をしておきたい。
2021年から水面下で行われてきた売却交渉
2021年夏、セブン&アイ・ホールディングスは、米国ガソリンスタンド併設型コンビニエンスストア「スピードウェイ」を約2兆3000億円という天文学的金額で買収した。このような大型買収を日本企業が決めることは珍しい。セブン&アイに対して2022年1月、米国アクティビストファンド(株主の中でも、経営改善を強く迫る投資家、「もの言う株主」とも言われる)のバリューアクト・キャピタルが、複数の異なる小売を経営するのでなく、グループの中で最も収益の高いコンビニ事業であるセブンイレブンに集中するよう要求したというのは周知の事実である。
セブン&アイにはもう一つ、残された仕事があった。それは、ノンコア事業(得意としない事業)を本体から切り離し、可能な限り高値で売却することで、今回の「スピードウェイ」買収資金返済に充てるということだ。思えば、敵対的買収を避けるため、多くの小売企業を傘下に持つコングロマリットカンパニーとなったセブン&アイ・ホールディングスは、アクティビストファンド達からの「コンビニ集中」のプレッシャーに勝てず、もと来た道を逆戻りしたというわけだ。
22年2月期の当期純利益は、セブンイレブン1896億円、そごう・西武が▲88億円。イトーヨーカ堂が▲112億円、セブン&アイホールディングスがコンビニ事業に集中すべきことはあきらかだった。
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