そごう・西武売却決定でどうなる!?ヨドバシ、フォートレス連合が取り得る4つの打ち手とは

河合 拓
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西武・そごうの将来はこうなる

西武池袋本店(2022年11月撮影)

 西武・そごうは222月期業績で営業収益4568億円、営業利益▲35億円(212月期は同▲66億円)。当期純利益は、192月期以降の直近4期は順に、+3億円、▲75億円、▲172億円、▲88億円で、普通に考えれば事業価値はほぼゼロだ。加えて、西武・そごうは、22年2月期時点で3000億円を超える有利子負債(長短借入金+リース債務)を抱えている(流動負債と固定負債の合計は約5000億円)。したがって、買い手は、ラフに計算しても、事業価値0+売却額2,000億円+そごう・西武の有利子負債3000=5000億円規模の価値を見いださねば成立しないことになる。

 ここからも、百貨店事業に将来を見いだしているとは考えがたく、百貨店事業の継続はない可能性が高い。

 現在、西武・そごうには約4500人の従業員が働いているというが、彼らはどうなるのか。長年、再生系ファンドと付き合ってきた私が思いつくのはやはりリストラだ。過去、いくつかの再建を手がけてきたが例外はなかった。

 しかし、読売新聞が報じるところによれば、今回はセブン&アイ・ホールディングス内の配置転換とヨドバシカメラが一部を採用することで雇用を守るとしている。

 また、再生の場合、業態は変えないまま一度縮小均衡させ再成長させる。この縮小均衡の時点でリストラをするのだが、今回は百貨店事業を継続するとは思えず、上物(うわもの)は価値ゼロとしても、駅前の好立地に金脈を見いだしたと思われるフォートレスは、この好立地を使って百貨店とは異なる事業を展開するとみるべきだろう。その際、これだけの大きな立地で働く人員をゼロから採用するとは想像しにくく、今回の「リストラはしない」という報道は、あながち100%嘘ではないと思う。

「西武・そごう再生に向けて」は誤報か?
ヨドバシ出店で不可解な点とは

 しかし、今回報道されている「再生」というのは、誤りではないかというのが私の視点だ。なぜなら、百貨店事業は、それ自体がすでにオーバーストアとなっており、今、いかなる手法を使っても再生・再建する方法はないからだ。あるとすれば、まず百貨店の数を大きく減らし、駅前好立地の高収益百貨店だけをのこして、再建をするのがもっとも合理的だ。実際、百貨店の数は、この10年で250から190店舗に減っている。いくつかの報道によれば、10店舗あるそごう・西武のうち「池袋」「渋谷」「千葉」などの数店舗に将来的にヨドバシカメラが出店するという。

 しかし、池袋、渋谷などはすでに家電大手がしのぎを削っている。ましてや、私がいうまでもないが、家電量販店はいまや「スマホ x Amazon」の組み合わせにより、消費者は平気でスマホを持って家電量販店に入り、「Amazonでポチる前に触ってみよう」という、いわゆる「ショールーム化」している。

 要点は、①今回のディールにおけるファンドのロジックとして目をつけたのは、一等地にあるという不動産価値と考えるのが妥当であるということ。②その上で、問題は、その一等地で何をしようとしているのか、ということである。

 外資ファンドは、かならず緻密な戦略を、戦略コンサルタントをつかって立案する。今回も、戦略コンサルタントをつかって徹底的にあらゆる可能性を調査し、「勝ち筋」をみつけた可能性もある。

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