売上の6割占める中国・日本で苦戦、円安…それでも最高益更新するユニクロ「4つの秘密」

河合 拓
Pocket

ファーストリテイリングの2022年8月期決算を読み返し、コロナ後の同社の成長の秘訣を分析したい。有価証券報告書はまだ公表されていないため、決算に関しては、ビデオ配信と決算説明資料より分析したものであることをお断りしたい。

winhorse/istock
winhorse/istock

ファーストリテイリングの戦略概要 4つのキーファクター

 崩壊の瀬戸際にあるアパレル業界だが、ファーストリテイリングから学ぶべきことは数多くある。もはやバブル時代の成功の方程式は通用しない、勝ち組の秘訣を素直に学ぶべきである。私は、数字を単に羅列する“調査屋”ではない。その数字からファーストリテイリングの戦略、そして、多くのアパレルが学ぶべき「勝つための法則」を提示して問題解決を提言するコンサルタントだ。本稿は、閉塞感漂うアパレル産業へ向け、改革のヒントを所々に提示している。

 ファーストリテイリングの戦略はキーファクターからなる。それは、①HQ(本社機能)のグローバル化、②国内、中国、アジア、そして欧州と、販売の多拠点化によるリスク分散、③30%台の圧倒的に低い販管費、④為替変動に負けない体質である。  

 OMO(オンラインとオフラインの融合)、D2CDXなどデジタル用語が飛び交う産業界だが、同社の決算説明会ではこうした話は一切でてこない。本質を見ている企業と側(がわ)の議論に終始してる企業の違いである。一つずつ解説しよう

 ポイント①HQのグローバル化が意味すること

 これは、先期から柳井正氏が盛んに言っていたが、日本、アジア、オセアニア、欧州にそれぞれHQ (本社)を置き、わざわざ日本にお伺いを立てなくとも、その場で決済をしスピードをあげて対応ができるようにする考え方だ。柳井氏は決算説明会で、「グローバル人材が育ってきたから可能になった」と述べたが、これは、エクセレントカンパニーがスピードを最重視することと無関係ではない。
 多くの日本のアパレル企業は、「上の承認を受けるから」「関係者の決裁をとらないといけない」といって、ものごとを決めるのが非常に遅く、ブラックデモクラシー、つまり「民主化の罠」に陥っているからだ。

 拙著『知らなきゃ行けないアパレルの話』(ダイヤモンド社)で私は、「コンサルタントをつかって成功する企業は経営トップが独裁者である場合に限定される」と書いた。自分の経験から独裁型経営者とタッグで行った改革はうまくいくが、調整型経営者からは幾度もハシゴを外された。売上収益23000億円という巨大化した世界企業ファーストリテイリングはもはや、「柳井大国」では経営が立ちゆかないのである。

 組織は、組織は、三枝匡氏の「Small is beautiful」、稲森和夫氏の「アメーバ経営」が基本だ。複雑な組織が入り交じり、一つのことをすることに何人もの決裁が必要な企業は、すぐにでも組織改編をし「コストセンター」を廃止し、すべての組織に「企画、生産、販売」の機能をいれた「PL責任(損益の責任)を持たせる小集団の事業部制」にすべきだ。スピードが要求される今、特にアパレル企業において機能別組織に未来はない。

 

河合拓氏の新刊、大好評発売中!「知らなきゃいけないアパレルの話

アパレルはSDGsに殺される!なぜ多くのアパレルは青色吐息でユニクロだけが盤石の世界一であり続けるのか!?誰も書かなかった不都合な真実と逆転戦略を明かす、新時代の羅針盤!

1 2 3

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態