シーイン模倣騒動と大差ないアパレル業界のパクリ体質 シーインがそれでも勝つ理由

河合 拓
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Shein(シーイン)が日本で騒動を巻き起こし始めている。原宿店にはなんと4000人を超える人が列をなしたと同時に、日本のメディアによるシーインが「商品模倣」で訴えられているという報道が物議を醸している。このように毀誉褒貶さまざまのシーインだが、ここには日本のメディアの安易に勧善懲悪をつけたい拙速な点、そしてその報道を鵜呑みにし都合の良い解釈をする業界体質がみてとれる。今回は「シーイン模倣騒動」の本質と正しい理解について私の分析を解説したいと思う。

Tanaonte/istock
Tanaonte/istock

シーインが商品模倣なら、日本のアパレルは自己矛盾に!

 まず、シーインを巡る訴訟について見ていきたい。米Wall Street Journal113日付けで、シーインとその親会社は、公式記録によれば、著作権と商標権違反で少なくとも50回米国で訴訟を受けている*、と報じている。

 次に幾つかの記事を読むと、シーインが訴訟を受けているのは、「アートワーク」など絵画のコピーであり、これは偽造罪でなく商標権侵害であり、偽造罪は見つからなかった。実際、日本の某メディアでは、「商品模倣」と書いているにも関わらず、続けて、「『たべる牧場ミルク』の牛のイラストがシーインで模倣されたと訴えた。」と主張に矛盾が生じている。

 断っておくが、私は、偽造品 (にせもの)はダメで、肖像権侵害がよいということをいっているのではない。そもそも、アパレルというビジネスに偽ブランド品(コピー商品)を除いて「偽造品」など存在するのか、という疑問と、なぜ、一次情報にアクセスしてそれを検証しようとしないのかということだ。

  これが偽造罪として成立するなら、日本のアパレルビジネスの現場は偽造罪だらけになる。日本の現場では「ここで作られている製品は、A社が使っています」と商社が他社の縫製仕様書を見せ、中国の工場にいけば、生産が流れている様を見て「これの着丈を3cm短くしたものをつくってくれ」と言うのが当たり前で、「模倣品ばかり」だからだ。実際、こうした様子をみてコピーした方もされた方も開き直り、「アパレルビジネスなど模倣ばかりだから、先に出してマーケットを奪った方が勝つのだ」とスピード競争になっている。

* Wall Street Journal, China’s Fast-Fashion Giant Shein Faces Dozens of Lawsuits Alleging Design Theft

 

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