セラシオジャパン代表に聞く!アマゾン出店のセラーやブランドを買収して急成長させる手法とは

構成:雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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アマゾンのエコシステムの中でセラー(出品業者)やブランドを買収して手中に収め、それらを自社のリソースで成長させるという特異なビジネスモデルで注目を浴びるセラシオ(Thrasio)。同社は昨年、日本法人「Thrasio Japan」を立ち上げ、日本市場の開拓にも動き始めている。セラシオのビジネスモデルやこれまでの成功事例、そして日本での戦略について、Thrasio Japan代表の二宮一央氏と、最高協業責任者の小澤良介氏に聞いた。

消費財は持ち主によって価値が変動する

──セラシオ創業の経緯と、M&A(合併・買収)から事業再生までの実際の流れについて教えてください。

Thrasio Japan代表 二宮一央氏
Thrasio Japan代表 二宮一央氏

二宮 祖業はECコンサルティングだったのですが、市場が急拡大していくなかで新規ビジネスのプロトタイプをいくつかつくり、最終的にアマゾンのセラー(出品業者)を買収・集約して競争力を高めていくという現在のビジネスモデルに行きついたようです。

 それが2018年のことで、セラシオとしての創業年になります。当時はファンドによる買収やセラー同士の合併という事象は一部でありましたが、それを事業のメーンに据える企業はほとんどありませんでした。

 実際の流れはシンプルなもので、まずは社内のM&A専門チームで「このセラーは扱う商品自体はいいから、ここを直せばより強いブランドになるのでは」といった分析をしてM&Aのテーマをはっきりさせる。買収後は社内のオペレーションチームが、ビジネスモデルの改修を進めていくというものです。

──一見したところ、ビジネスモデルとしては投資会社に近いように感じます。

二宮  確かによく間違えられるのですが、最たる違いは投資リターンを真っ先に求めないという点です。投資会社であれば買収した事業や企業をどこかのタイミングで売却して利益を得るというのがゴールになります。

 しかしわれわれは、現段階では売却益を得ることを目的とした買収は行いません。買収したすべてのブランドを未来永劫運営していくという前提で買収を進めています。

──売却を前提とせず、あえて時間と手間をかけて自社で買収した事業のテコ入れを図る理由は何でしょうか。

二宮 われわれが買収対象とする消費財は、持ち主によって価値が大きく変わるという特徴があります。たとえば不動産であればデベロッパーが入り込まない限り、基本的には「誰が所有するか」によって価値が左右されることはありません。しかし消費財については、われわれは「セラシオが持ち主でないと価値が減っていくモノ」としてとらえています。つまり金融商品とは対極にある、きわめて属人的なものだと考えているのです。

 属人的であるがゆえに、消費財ブランドというのはバリュエーション(企業価値評価)が非常に低い資産クラスでした。そこにわれわれはチャンスを見出したわけです。つまり、

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雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2016年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。企業特集(直近では大創産業、クスリのアオキ、トライアルカンパニー、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。趣味は無計画な旅行、サウナ、キャンプ。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。全都道府県を2回以上訪問(宿泊)。

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