ビームスがライブコマースのシステムを自前で開発した、重大な理由とは?
ライブ配信とECのシステムを結合
さらに、21年4月からは、自社開発したITシステムでのライブコマースに切り替えた。矢嶋氏は、「これまでにない利便性の高いライブコマースのシステムなので、顧客満足度が格段にアップするでしょう」と、自信満々だ。
矢嶋氏によれば、小売業が現在、ライブコマースを行う場合、他社が開発したライブ配信プラットフォームを“場所借り”するケースが大半というが、「カスタマーファーストの観点では設計されておらず、当社が要望したようなシステムがなかったので、それなら内製化するしかない」と判断したそうだ。
自社システムの開発は、20年10月ごろより始動。コミュニティデザイン部が中心となって、システムのコンセプトや基本構造をまとめ、具体的なシステム開発は、専業のITシステム企業に外注した。
自社開発した新型システムの最大の特徴は、ライブ配信の視聴から商品の購入、決済までの手続きを、ワンストップで可能にした点だ。
「小売他社の場合、借り物のライブ配信システムと自社ECサイトのシステムが、基本的にリンクしていません。そのため、ライブ配信中の商品が欲しい場合には、ECサイトにログインし直さなければ商品を購入できない仕組みがほとんどで、お客さまにストレスをかけていたのです。そうしたネックを解消するのが狙いでした。当社のライブコマースは、1回のログインで動画を見ながら商品を購入するといった、シームレスな買い物体験をご提供できます」(矢嶋氏)。
同社のライブコマースは現在、週1回、1回約1時間のペースで実施している。商品説明などで出演するスタッフ3~4人のほか、iPhoneで動画を撮影したり、視聴者の数をチェックしたり、コメントを出演者に伝えたり、配信システムを管理したりする“裏方”のスタッフを含めて、合計約10人で運用しているという。出演するスタッフは、身長の異なる数名をバランスよく入れるなど、幅広いスタイル提案ができるよう工夫している。
矢嶋氏は、「現在は本部主導で実施していますが、今後は社内に本部のノウハウを落とし込み、各店舗からでも気軽に配信できるようにしたいですね」と、抱負を語る。