客数減を食い止める! ヤオコー川越今福店が行う2つの地域密着戦略

松尾 友幸 (ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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2019年3月期決算で、30期連続の増収・営業増益を達成したヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)。同業他社が苦戦するなか好調に思われるヤオコーだが、既存店ベースの客数は対前期比は99.1%と減少している。10月の消費増税を控え、顧客の取り込みがますます重要になっていくなか、ヤオコーはどのような方法で客数を確保するのか。6月18日にオープンした新店「ヤオコー川越今福店」(埼玉県川越市:以下、川越今福店)の取り組みから、同社の地域密着戦略を紐解いていく。

 

ヤオコー川越今福店

 

ネットスーパーの活用で
リアル店舗間の空白地帯を埋める

 川越市内では6店舗目となる川越今福店は、店舗面積18182の標準的なサイズの店舗だ。商品政策についても、193月にオープンした旗艦店の「ヤオコー久喜菖蒲店」(埼玉県久喜市)と大きく変えているわけではない。

 しかし、出店場所からは新たな顧客を獲得するための意図が明確に見てとれる。というのも、同店の半径1km圏内には食品スーパー(SM)がまったくないのだ。これまで買い物が不便だった近隣住民を囲い込むことで、客数の増加を図る。

 顧客確保のための戦略の1つが、ネットスーパーだ。川越今福店では、8月下旬よりサービスを開始する。ヤオコーは152月に「三芳藤久保店」(埼玉県入間郡)で初めてネットスーパーサービスを導入して以来、ドミナント出店の利点を生かしながら、既存店で少しずつ配達可能エリアを拡大してきた。川越今福店での導入で対応可能店舗は5店舗目となったが、新店でネットスーパーを行うのは初の試みとなる。そのため、店舗の設計段階でバックヤードに専用の作業スペースを約100m2確保した。新店での挑戦について、川野澄人社長は「ネットスーパーを新店に標準装備することで、使い勝手を見ながら今後の新店で展開可能かどうかを試したい」と語る。

 ヤオコーのネットスーパーの配達範囲は、各店舗から半径1.52km程度。川越今福店は、同じくネットスーパーサービスを導入している近隣の4店舗とドミナントエリアを形成しているが、「リアル店舗間にはどうしても空白地帯ができてしまう。その隙間を埋めるためにネットスーパーを活用し、地域住民の利便性をより高めていきたい」と広報担当者は話す。

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記事執筆者

松尾 友幸 / ダイヤモンド・チェーンストア 記者

1992年1月、福岡県久留米市生まれ。翻訳会社勤務を経て、2019年4月、株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア入社。流通・小売の専門誌「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属。主に食品スーパーや総合スーパー、ディスカウントストアなど食品小売業の記者・編集者として記事の執筆・編集に携わる。趣味は旅行で、コロナ前は国内外問わずさまざまな場所を訪れている。学生時代はイタリア・トリノに約1年間留学していた。最近は体重の増加が気になっているが、運動する気にはなかなかなれない。

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