イオンのビオセボン(オーガニック食品スーパー)の店舗戦略

取材・編集:大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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実験・検証を経て、青果、デイリー、子供向け商品を強化

ビオセボンは麻布十番店での実験・検証を経て、店づくりをいかに進化させているのか。

 まず、青果の品揃えを拡大させている。麻布十番店の開店当時は150品目ほどだったが、有機栽培を行っている契約農家を地道に開拓して、現在では多い店で約230品目を揃えられる体制を構築できている。最近はビオセボンの認知度が高まり「店舗で扱ってほしい」と生産者のほうからの依頼が増えているという。今後も品揃えを広げることで、来店頻度の向上や店舗全体の売上増につなげる。

 青果同様に売上を伸ばしているのがデイリー商品だ。とくに豆腐は前年と比較して130%ほどで推移している。土屋社長は「1号店開業当時と比べると、オーガニック商品を日常的に購入する消費者がとても増えている」と語る。より日常的に利用してもらえる店をめざし、2号店以降は内装や什器の特別感をあえて出さず、一般的なSMのような雰囲気を演出するようにしている。

ビオセボン ベビー
ベビー・キッズ向けの商品を大きくコーナー化している。離乳食や菓子、飲料のほか、スキンケア、玩具まで揃える。

 需要を見込み、販売を強化しているのがベビー・キッズ向けの商品だ。「子育てを機に、ふだんの食事や使用する日用品の安全・安心にこだわるようになる女性は多い。麻布十番店では全体の約4割を占めるほど、小さい子供連れの来店客が多いことから対応に力を注いでいる」(土屋社長)。例を挙げると、ベビーフードや子供用の菓子でフランスからの直輸入商品を増やした。日本ではこれらのカテゴリーでオーガニックにこだわる商品がまだ少ないため支持を得ているという。今後は、店内におむつ交換や授乳ができるスペースを設けるなど、子供連れで来店しやすいようにハード面も工夫したい考えだ。

 イートインの活用も積極的に進めている。18年に出店した7店では、最小規模の「東武池袋店」を除いた全店舗にイートインを導入。ビオセボン初の2層での出店となった「横浜元町店」では、2階部分にビオセボン最大規模となる約20席のイートインを設けた。

ビオセボン イートイン
多くの店舗で外から見える位置にイートインを配置。

 「赤坂店」では、店舗周辺にオフィスや宿泊施設が多いことから、ビジネスパーソンや旅行者向けにカフェやバルとしてのイートインの利用を促している。朝は焼きたてパンや、店頭で扱うオーガニック果実のスムージーを揃えて朝食として提案。夕方から夜にはレジカウンター横でグラスワインとともに、チーズや加工肉を勧める。

ビオセボン バルイメージ
「赤坂店」ではレジカウンターでグラスワインとともにチーズや加工肉を販売し、バルとして利用を促している。

 そのほか麻布十番店では、店頭で扱うオーガニック商品にスポットを当てたワークショップをイートインで定期的に開催している。このようにビオセボンの魅力を知ってもらうための場として今後もイートインを活用していく方針だ。

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取材・編集

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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