2030年までと2040年までとで激変!最適な物流改革の手法を解説

解説:ローランド・ベルガー パートナー:小野塚征志
構成:ダイヤモンド・チェーンストア編集部
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「物流の2024年問題」が叫ばれる一方、政府からは長期的な国内物流の将来像が示されるなど、食品小売業の物流を取り巻く環境に混乱を感じている業界関係者は少なくないだろう。食品小売業各社は何を考え、いかに手を打っていくべきか。欧州最大級の経営戦略コンサルティングファームであるローランド・ベルガー パートナーで、サプライチェーン/ロジスティクス領域の深い知見を持つ小野塚征志氏に聞いた。

物流の2024年問題は一過性のものではない

 NX総合研究所の試算によると、「物流の2024年問題」への対策を何ら講じなければ、国内の輸送能力は24年度に約14%、さらに30年度になると約34%不足する可能性があるという。企業にとっては商品がこれまでどおり運べず、事業活動や業績に直接的に影響を与える課題であり、物流問題は24年だけの一過性のものではなく、危機の「始まり」といえるものだ。

 政府は、メーカーや卸といった発荷主だけでなく、小売企業を中心とする着荷主にも物流改善に向けた取り組みをより強く求めている。23年6月に公表された「物流革新に向けた政策パッケージ」では、着荷主に物流改善の取り組みを義務付ける方針が示され、24年の通常国会ではいよいよ法制化される公算が大きい。また、荷主企業や物流事業者に対し、物流の適正化・生産性向上に向けた「自主行動計画」を23年12月末までに策定するよう促している。

 食品小売業界では、バローホールディングス(岐阜県)をはじめ、物流領域で先進的な企業がいくつかみられるほか、日本スーパーマーケット協会(東京都)が物流で使われるクレート(通い箱)の標準化事業を開始するなど、前向きな取り組みも増えてきた。「物流は競争領域ではなく協調領域」ととらえる向きが広がり、23年3月に発足したサミット(東京都)、マルエツ(東京都)、ヤオコー(埼玉県)、ライフコーポレーション(大阪府)が立ち上げた「首都圏SM物流研究会」(現在は全体会の名称を「SM物流研究会」に変更)のように、企業の枠を超えた連携も地域ごとに起こりつつある。

可児チルドセンター内部
食品小売業界でも物流領域で先進的な企業がいくつかみられる。
写真は代表企業の1つであるバローホールディングス(岐阜県)の「可児チルドセンター」(岐阜県可児市)の自動倉庫。
同社は一貫して自前主義を採り、物流センターの運営だけでなく、建物の設計や庫内レイアウトの設計など
物流インフラのエンジニアリングも、傘下の中部興産(岐阜県)が担う

生鮮の輸送能力は30%不足する見込みも

 しかし、これらの動きは業界のなかでまだ一部にすぎない。実際に事業活動にも影響を与えるまで深刻な課題となりつつある物流問題に対して、食品小売業も例外なく着荷主として改善に取り組む必要がある。

 では、どのように改善を進めていくべきか。まずは、先進

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