食品小売業にいまこそ、物流に戦略が必要な理由とその方法とは
「物流の2024年問題」を機に大きな変革が求められている食品小売業界。そうしたなか「食品小売業も今後は物流に戦略が必要である」と説くのが戦略物流専門家の角井亮一氏だ。中長期的な戦略を立てるために必要な視点、踏まえておくべき食品小売業界の物流の実情、さらに今後の有効な打ち手について角井氏に聞いた。
社会の意識変化で変わる物流の常識
まず、食品小売業界を取り巻く物流の現状について述べたい。物流はこれまで、買い手つまり消費者が“神様”のような存在であり、製・配・販ともに、最終的な届け先のお客さまの要望であれば、なんとかやり繰りし応えていくというのが常識だった。
しかし、ここ1、2年で、配送を担う物流事業者からはいよいよ限界の声があがり、意識改革が最も必要ともいわれてきた「販」の食品小売企業も2024年問題の対策に動きだすなど、従来の物流体制に対し、社会的に強い問題意識が生まれている。
行政からの積極的な働きかけもこれを先導している。
19年3月には、国土交通省は「ホワイト物流」推進運動をスタートさせた。これは、荷主企業や物流事業者に対し、トラック輸送の生産性向上や物流の効率化、女性や60代以上の運転者なども働きやすいホワイト労働環境を実現していくように働きかけるものだ。
その後23年6月には「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」が制定された。
同ガイドラインでは、荷主企業に対して、実施が必要な事項として「荷待ち時間・荷役作業等に係る時間の把握」「荷待ち・荷役作業等時間 2時間以内ルール/1時間以内努力目標」「運送契約の書面化」などを挙げる。また「予約受付システムの導入」「パレット等の活用」「共同輸配送の推進等による積載率の向上」など、実施を推奨する事項も明記されている。
こうしたなか製・配・販のうち、「製」のメーカーは比較的早期に物流効率化に向けて手を打ってきた。たとえば、19年に立ち上がったF-LINE(エフライン:東京都)は、「競争は商品で物流は共同で」という理念のもと、味の素(東京都)、カゴメ(愛知県)、ハウス食品グループ本社(大阪府)ら食品メーカー大手5社が傘下の物流子会社を統合して設立した会社で、共同物流を行っている。現在は北海道内が中心だが、輸配送にとどまらず、商慣習、伝票の仕様統一、納品条件のすり合わせなども進めている。
なぜ食品小売業の物流協業は進みにくいか
対して食品小売業でも、
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