「新流通ビジョン」にみる物流改革の本質、DXで事業モデルそのものを抜本改革へ

解説:明治大学グローバル・ビジネス研究科専任教授:橋本雅隆
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食品スーパー(SM)企業同士で連携する物流研究会が各地で発足するなど、食品小売業界では物流における意識改革や対策が進みつつある。そうしたなか押さえておきたいのが、物流問題の対策は、物流領域だけにとどまらず、小売チェーンのビジネスモデルそのものの改革が必要になるということだ。専門家がチェーンストアシステムと物流の構造を解説する。

物価高のなか提出された新流通ビジョンの意義

 2023年3月に15年ぶりに経済産業省が新たな流通ビジョン(以下、新ビジョン)を作成した。正式名称は「物価高における流通業のあり方検討会 最終報告書~よみがえるリアル店舗~」で、今回の特集テーマである物流も含めて、流通業のあり方を検討するというもの。同名の検討委員会が経産省によって設置され、筆者も委員として参加した。

 同ビジョン作成の背景にあるのが、現在の物価高だ。とくに生活必需品において顕著で、一般消費者の生活を直撃している。名目賃金は上昇傾向にあるが、物価高には追い付かず、23年9月の実質賃金は18カ月連続でマイナスとなった。必然的に、消費者の財布のひもは固くなり、低価格志向が強まっている。

 一方で食品小売業では、物流費や電気代、パート・アルバイトの賃金などの各種コストも上昇している。しかし、前述した低価格志向の高まりからこれらを価格転嫁することは容易ではない。

 SMは、コロナ禍で外食が控えられ、一時期、食料品の売上が上昇したものの、現在はコスト上昇圧力が収益を圧迫している。こうした厳しい環境下において、食品小売業はいかにして投資を行い、その利益回収率を引き上げるかが重要となる。

 新ビジョンでは、このように物流や人材など流通業のリソースが制約を受ける

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