構想進むフィジカルインターネット、その大きな効果とステップ、懸念とは
政府が2040年を目標に物流のめざす姿として掲げる「フィジカルインターネット」構想。フィジカルインターネットとはいかなるもので、今後実現に向けてどのようなアクションが必要になっていくのか。フィジカルインターネット実現をめざす組織として設立されたフィジカルインターネットセンター(東京都)理事を務める深井雅裕氏に聞いた。
共通規格を設定し混載 物流リソースをシェア
まず、「フィジカルインターネット」について説明したい。
デジタル世界のインターネット通信では、パケットという共通規約を定め、各社が回線を共有することで、大容量のデータ通信を可能としてきた。フィジカルインターネットでは、この考え方を物流に応用し、業種業界を超えた共同規格のパレット等を設定し、物流に関わるリソースを共同で利用することをめざすというもの。「究極のオープンな共同輸送・配送」ネットワークとも呼ばれている。
今、フィジカルインターネットに注目が集まり始めている。要因としては「物流の2024年問題」が大きい。同問題の影響によりNX総合研究所によると、コロナ前と比較して最大14.2%の輸送能力不足が発生すると予測されている。
物流は各企業の事業経営にプロセスとして入り込んでいる。そのため物流の課題は業界に限ったものではなく、物流プロセスを持つすべての企業の課題だ。こうした状況を見過ごすことは、各企業が売上を維持できないだけでなく、企業としてのサービスレベルが維持できず、その存在意義が問われる事態に陥りかねない。
フィジカルインターネットはこうした物流課題の解決に貢献することが期待される。フィジカルインターネットの提唱者である米ジョージア工科大学のブノア・モントルイユ教授らの効果検証によると、アメリカの大手物流事業者が自社物流網においてフィジカルインターネットを実現すれば、輸送コスト、CO2排出量はともに約6割削減できると試算されている。
またフランスのパリ国立高等鉱業学校のエリック・バロー教授らの効果検証によると、フランスの大手流通業カルフール(Carrefour)とカジノグループ(Groupe Casino)が両社の倉庫の数を2社合計58カ所から37カ所に集約して共同配送を実施できるようになれば、在庫量が60%以上、トラックの走行距離が15%、CO2排出量は60%削減される試算も出されている。
さらに欧州では「スマートボックス」と呼ばれる標準化されたコンテナを使用し、輸送効率化だけでなく、ダンボール削減による環境負荷軽減も実現している。
このようにフィジカルインターネットは物流の持続可能性だけでなく、働き方改革やSDGs(持続可能な開発目標)の実現に貢献するなど、さまざまな効果が期待できるといえる。
行政主導で社会実装へ、政策や規定の整備進む
こうした状況を受けて日本でも22年、
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